山崎奈々 Episode2:夢が生まれ、上書きされて。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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センター南駅の出口の先には広場があり、子どもがキャッキャと走り回っていた。
電線はすべて地下に這わせてある。キレイに整えられた木々のほかに視界を遮るもののない、抜けるような青空。太陽が眩しい。
そのすぐ近くの結婚式場は、お城みたいな場所だった。
お庭も緑がキレイで、大階段があって、チャペルがあって、ステンドグラスは幻想的に透けていて……。

「夢みたい……!!!! 」

場所の非日常感に加えて、私自身、普段は袖を通すことのないステキなドレスを身に着けていた。髪もセットして。
おとぎ話か映画の世界に紛れ込んだみたい。ドキドキ、ワクワク。

そこに現れたお姉ちゃんは、もうお姫様みたいだった。はっきり言って、私の知っているお姉ちゃんじゃない。
早いうちからお母さんに心配を掛けてきたお姉ちゃん。数ヶ月前までその生死すらわからなかったのに。
そんな彼女が……真っ白なドレスに身を包んで、キラキラと微笑み、大勢の人に祝福されている。
お母さんへの手紙を読んで涙ぐんでいる。
集まっている人も、みんな笑顔。「おめでとう」と「ありがとう」の嵐。
どんな人かまったくわからなかった旦那さんも、参列しているお友達と交流するうちに人柄がわかってきて。

「なんてステキな空間なの……!!! 」

メーカーも商社も頭から消えた。私は、これを仕事にする。結婚式を作る仕事をする。
グレていた人でも大変だった人でも、どんな人でも祝福されて主役になれる、結婚式という場。
感謝と笑顔のあふれるこの空間を、私は作るんだ。

お姉ちゃんの挙式した結婚式場を持つ会社が第1志望。そのほかにもいくつかの会社の試験を受けた。
第2志望の会社の社長面接を受ける時のこと。せっかくなので、入るかもしれない会社の商品を知っておきたいと思った。
レストランウェディングのためのレストランを持っている会社なので、面接の前に大崎のそのお店でランチをした。
食事を終え、時間までどこかで時間を潰そうとしたその時。

「山崎さんですよね? このまま面談にしましょう」
席に案内してくださったお店の方が、そう言って私の正面に座ったのだ。
面談予定だった社長に急な予定が入り、総務であるその方が私の面接担当になったのだという。

面接らしい面接はほぼなかった。「あなたは採用するから、あとはお話しましょう」と言われ、すぐに仕事の話に。
その方は、もともとフリーのウェディングプランナーだったそうだ。
会社という枠に制限されないので、お客様の要望に寄り添い、
音響機材ひとつ抱えていろんな場所での式をプロデュースしてきたというのだ。
親御さんの入院する病院のロビーを式場にしたり、自宅で式をしたり、初デートした公園にテントを張って挙式したり……。

結婚したら結婚式をするものだと思っていた。そして、それはキラキラした結婚式場でするものだと思っていた。
親御さんのために場所が制限されたり、こうしたいという強い要望があったりするお客様に寄り添い、
会社の事情に縛られることなく選択肢を考え、それを実現する。
組織に属して働くよりお客様との距離が近く、責任も大きい分やり甲斐もありそう、何よりカッコいい。

「こんな働き方があるんだ……!!! 」

夢が上書きされた瞬間だった。
まずは、この会社に入って力を付けよう。この方の傍で学べる限りの事を学ぼう。
そして、いつかフリーのウェディングプランナーになる。
この方みたいにお客様に寄り添って、組織にいる人間にはできないような質と満足度の高い式をプロデュースするんだ。

どんな人でも主役になれる結婚式のプロデュースを、いつかフリーランスで。
決意を新たに、大学卒業後私はその会社に入社したのだった。

掲載日:2018年09月07日(金)

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フリーウェディングプランナー、「Prism Wedding」代表

山崎奈々(やまさき なな)

フリーランスのウェディングプランナーとして活躍する山崎奈々さん。普通の大学に通っていた山崎さんの進路を変えたのは、お姉さんの結婚式での感動体験でした。

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