山崎奈々 Episode3:怒涛の会社員時代、そして。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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計画は想定外の方向に。専務の勤める大崎のレストランが閉鎖され、私は富山県に配属されたのだ。
それでも憧れの仕事、初めのうちは学ぶ事すべてが楽しかった。
が、じきに内情がわかってくる。経営が苦しいのだ。しばらくすると唯一の上司と同期が同時に辞めてしまった。

お客様のためにも自分のためにも、必死で学び、働いた。
さっぱりわからなかった経理もなんとかできるようになったし、本来サービススタッフのするような仕事も覚えた。
雪かきの腕も上がった。冬場は雪が1メートル以上積もるような場所なのだ。

給料の未納の続く派遣会社にスタッフを出してもらうために頭を下げたり、富山で出来た友人に当日手伝ってもらったり。
業者への未納が原因で式当日にパンを出してもらえなくなった時には、隣県のパン屋さんに高速を飛ばして届けてもらった。

そんなこんなで入社して1年ちょっと。とうとう会社が倒産し、私は神奈川の実家に戻ってきた。
がむしゃらにやってきたものの、もっときちんと学びたい。大きな、きちんとした会社で学びたい。
段ボールも片付けていないリビングのソファに腰掛け、先の事をあれこれ考える。
パソコンを開き、ふと閃いて、お姉ちゃんの結婚式を挙げた会社の名前を打ち込んだ。就活中は第1志望だった会社だ。
立派な、キレイなCGとともに、私の目に飛び込んできた文字、それは……

「みなとみらい店をオープンします」

ああ、次私ここに行くんだな。直感的にそう思ったら、すぐに採用された。前の会社での営業の成約率が買われたのだろう。
プランナーとしての就職を望んだものの、希望は通らず。まずは営業で成績を出してから、と受け止めた。

期待されていた営業成績は初月、私だけ悪かった。
「同じものを売って人が結果を出してるんだから、私のやり方がよくないんだろう」
間の取り方の上手い人からはそれを、笑うタイミングの絶妙な人からはそれを。人を観察し、盗めるものを盗みまくった。
2ヶ月くらいで成約率が伸び、その後落ちなくなった。じきに契約数は全国一に。成績を上げれば上げるほどほめられてうれしい。
自社で販売する指輪の契約数も、キャンセル料金を保証する保険の成約率もトップ。
3冠を取った時、ふと思った。「これ以上、この会社で何やるんだろう? 」

はたと気づいた。いつの間にか、数字を求める自分になっていたことに。数字をほめられて喜ぶ自分に。
お客様に寄り添って式を作るという初心は、いったい……。

この会社で契約を取ったお客様の式をひとつひとつ思い返してみた。
結婚式、一生に一度の大きなイベントだ。
「こんな事がしたい」「こんな演出をして……」要望を話される時の目の輝きを、契約を取った私はしっかり覚えている。
けれども、実際にそのお客様の式を覗いてみると、「こうしたい」とおっしゃった事がなされていないのだ。
担当プランナーに聞くと、食事をグレードアップして予算オーバーしたから当初の要望はカットしたのだという。

私は知っている。
料理や飲み物は利益率が高いので、利益の小さな要望を実現するより、飲食で利益を上げたい本心がプランナーにはあるのだ。
「お客様が納得してるなら、私の言うコトじゃないけど……」
本当にそれでいいのかな。少なくとも、この会社でプランナーになりたいとは思わなくなっていた。

前後して、働きすぎて突発性難聴になって休職したり、
それが原因なのか海外研修に派遣されるメンバーから急に外され、事前準備金も返せと言われたりした。
「いろいろ頑張って結果も出してきたけど、こういう対応なんだな……」

もうこの会社でする事はない。2016年8月、私はその会社を退職した。
自分を労わるつもりで22日間のハワイ旅行に。翌年春ごろの独立を見据えて準備するつもりで、ハワイでもいろいろ考えていた。
そんな矢先。友人から連絡をもらったのだ。
「友達が結婚式するんだけどプランナーが決まらないの。奈々、やってくれない? 」

聞けば、日程と会場と花屋さんだけ決まっていて、あとは何も決まっていないという。
逆に、日程と会場が決まっているということは、期限が決まっているということだ。

「起業準備どころじゃない! 」

11月の帰国後、その式のために奔走した。
フリーランスとしては何のコネクションもないなか、
カメラマン、ヘアメイク、衣装、司会、音響……あちこち当たって当日に間に合わせ、1月のその挙式を無事終えたのだった。

大仕事を終えてほっと一息。春の起業予定よりは早いけれど、このままフリーランスを名乗ることにした。
そんな私が次に手掛けることになったのは、中学時代の友人の結婚式だった。

掲載日:2018年09月07日(金)

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フリーウェディングプランナー、「Prism Wedding」代表

山崎奈々(やまさき なな)

フリーランスのウェディングプランナーとして活躍する山崎奈々さん。普通の大学に通っていた山崎さんの進路を変えたのは、お姉さんの結婚式での感動体験でした。

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