関茂雄 Episode4:人生のコンパス | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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いろいろあって免許をなくしたタイミングで、東京に出た。金沢で車なしの営業なんて無理だから。
経験を活かして、人材系の法人営業の仕事で2ヶ月でリーダーになった。なってみたら、やり甲斐もなくなって。
そんな時、学生時代に始めた家庭教師の営業代行の仕事をくれていた会社が、東京に進出するとかいう話を聞いた。
昔の縁でそこを手伝うことに。昔の縁で仕事をもらうなんてコトが、僕にもあるのか。

もう何度目だろう、人材の会社は酒で失敗して辞めた。
後者の家庭教師の会社もちょっと傾きつつある、そんなころ。


2017年7月。それは突然だった。
家庭教師の会社の顧問の方の縁で知り合った社長さんが、うちの会社にいらした時にこう言った。

「一生涯、孫子(まごこ)の代までお付き合いできるツールは、マーケティング以外にないですよ」

金沢のあの人の言葉が重なる。
一生涯、孫子の代まで。
言葉は違うけど、要するに彼はそういうコトを僕に伝えようとしたんじゃないか。

「きちんとマーケティングをすれば、売れ続けるし感謝される。お客さんとずっと付き合っていける。
 もし皆さんがまだ売り逃げ営業をしているなら、ぜひ一度、弊社の無料セミナーを受けに来てください」

行かなきゃいけないと思った。
「金を払って何かを学ぶなんて」「セミナーなんかに行ってる奴は……」
そんな抵抗感も持ちながら、なぜか、行かなきゃいけないと思った。

3日間の集中セミナー初日、頭では「なんで俺が」と思いながら、心はそわそわしていた。
抵抗感と、「ここに何かがある」という感覚と。

正しいのは後者だった。
初日の“戦略”の講義で言われたこの言葉が、僕の人生を見事に言い表していた。


「どの山に登るか決めない限り、どのルートで登るかも決められない。闇雲に行動するしかないですよね」

ああ……これだ。

視界が開けた。霧のなかをもがくような僕の人生に、初めて光が射した。


なんで、これまでこんなにブレブレだったのか。何をやっても上手く行かなかったのか。
記憶が飛ぶほど酒を飲んでしまうのか。
女の子に好かれても、稼いでも、満たされないままだったのか。

僕は、この人生で登る山を決めていなかったんだ。
その山を登るためのルートも決まらなければ、指針も持っていなかった。

軸というものが僕にはなかった。
軸がなければブレるのは当たり前、その場その場行き当たりばったり、手当たり次第行動するしかない。
だから、どんなに結果を出しても、逆に上手く行かない時にも、霧のなかで迷子になったような不安が拭えなかったんだ。

ずっと、ずっと、誰かに認められたくて。
小さいころに「こうでなくちゃいけない」と否定された、自分らしい自分。中学の時にみずから封じ込めた自分。
「なんで認めてくれないんだよ! 俺のままで認めてくれよ! 」
そんな叫びがまっすぐ表現できなかったせいで、そもそも自分がどんな人間なのかを見失ってしまった。
自己同一性の曖昧なまま、収入、肩書き、モテること……そうしたわかりやすい結果に走った。

誰かと知り合ってもその場限りとしか思えないから、心を開くとか本音で付き合うとかいったコトもできなくて。
心はずっとカラカラだった。

軸を、持とう。自分らしさを思い出して、この人生で登る山を決めて、登るためのコンパスを得よう。
そうすることで、僕はきっと変われる。
売り逃げ営業なんかじゃなくて、孫子の代まで堂々と付き合える営業が、仕事が、生き方が……きっとできる。

恥ずかしい限りの人生だった。振り返りたくなくて、すべてぶった切ってきた。
たまに振り返る時はネタにして笑い飛ばす。本当の意味で反省して活かしたことなんかなかったかもしれない。

でも、そんな未熟だった僕も僕。全部認めて、ここからやり直そう。
こんな僕が変われたなら、今後出会うどんなお客さんの力にもなれる。どんな人の希望にもなれる。

ここから、僕は本当に生きるんだ。子々孫々、未来永劫誇れる人生を。

掲載日:2019年01月18日(金)

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CSO株式会社 代表取締役

関茂雄(せき しげお)

悩めるすべての人に、人生や経営の目的や指針、戦略を見出すコンサルを手掛ける関茂雄さん。その前半生は、自分が何者なのかを見失ったまま試行錯誤していたのだといいます。関さんが人生の軸を掴むまでの物語です。

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