関茂雄 Episode3:正反対の眩しさを | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

» 関茂雄 Episode3:正反対の眩しさを

大手人材系の会社に転職し、法人営業に携わった。
個人宅訪問営業とは勝手が違って初めは戸惑った。
それでも先輩の特訓を受けて、全国表彰される成績を出すように。

ただ、ここでも同じだった。2年勤めたころにまた酒の席で失敗して。
「なんでいつもこうなんだ……」
言い訳が欲しかった。休職してうつ病の診断をもらい、服薬を始めたのがまずかった。
うつ期とは言い切れない時にうつの薬を飲むことで、本当に動けなくなったんだ。

未来の見えない霧のなかで、がむしゃらに行動することすらできない。
そんな状態が嫌で。なんとかしたくて。
足が動かないなら車で物理的に体を動かそうと、金沢から北海道まで車で回った。
「確かに、進んではいる」
何かが変わった感覚はない。ただ、景色は変わり、体は前に進んでいる。その感覚だけが頼りだった。

何もしないわけにはいかないから。
会社は辞め、もう病気は治ったことにして、個人事業で営業代行の仕事を始めた。
営業だけでは食えないと思って、縁のあったいろんな仕事も手掛けていった。ことごとく失敗した。

「商材が悪いんだ。俺には営業力があるんだから」
売れない理由は商品が悪いから。仕事をくれる会社が悪いから。運が悪いから。
こんなに運が悪いのは……
「関わった女の子たちの怨念でも憑いてんのか? 」
思い当たる女の子の名前を紙に書いて、謝罪の言葉を書き付けて。魔除けと思って持ち歩いた。
もちろん、何にもよけられやしないんだけど。

たまに収入があると、いつものルート。全部キャバクラに消えていく。

そんな時、ある仕事がキッカケで、和食料理店のおじさんと知り合った。

「お前、いまヤバいやろ。カッコつけんな」
「別に、ヤバくないっスけど」
なぜかいろいろ詰めてくる。
反発しながらも、個人事業の合間に時給千円で働かせてもらうことに。正直、収入としては有難い。


めちゃくちゃ漢気のある人で。
もう30年の付き合いだとか、毎晩利用する常連さんだとか、彼のことを慕う人がたくさんいるんだ。
そんな彼から見て、僕の生き方や仕事の仕方は頂けないものだったんだろう。

地元の付き合い、高校、大学、前職……そこから離れるたびに人間関係全部ぶった切って。
女の子との関わり方も同じ。お客さんとの付き合い方も同じ。
その場限り、商品やサービスを売って対価を受け取ったら、あとのコトは知らない。
それが、モノを売買するってことだろう?
なにも、騙したり契約違反をしたりしているわけじゃない。約束した責任は果たしている。


「お前、その付き合いどの程度のつもりなんだ? そのお客さんとどのぐらい付き合う気なんだ? 」
「とりあえず、1年ぐらいっスかね」
「その先は? 1年付き合って、その後どうすんだ? また売り逃げか? 」
「……うっさいっスね」
バイト後にご馳走になりながら喧嘩になることもある。でも、彼は僕に食い下がる。諦めない。

「売り逃げ、いい加減やめろよ。って言ってもやめやしねえだろうから、嫌だと思うまで……やりたいだけやれ」
こう突き放されると
「いや、そんなん言うなら……やめますよ」
なんて返すこともある。が、やめられやしない。

それでも、彼の見せてくれる生き方は、僕のそれよりうんとステキに見えた。
大勢の人に愛され、感謝され、対価も受け取り、笑顔で付き合っている。

僕のやってきた仕事は間違っていたんだろうか。
僕の生き方は何がズレていたんだろうか。
この人みたいにひとりひとりと長く付き合っていくなんてコトが、僕にもできるんだろうか。まさか。

掲載日:2019年01月17日(木)

このエピソードがいいと思ったら...

この記事をお気に入りに登録

CSO株式会社 代表取締役

関茂雄(せき しげお)

悩めるすべての人に、人生や経営の目的や指針、戦略を見出すコンサルを手掛ける関茂雄さん。その前半生は、自分が何者なのかを見失ったまま試行錯誤していたのだといいます。関さんが人生の軸を掴むまでの物語です。

エピソード特集