川口美樹 Episode3:「一流」と自分との差に気付いたキッカケ | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

» 川口美樹 Episode3:「一流」と自分との差に気付いたキッカケ

色々な芸能人の方がボランティアで炊き出しに行ったり寄付をしたりというニュースがたくさん耳に入る。僕も何か役に立ちたいと思っていた。
そんな時、知り合いからボランティアの誘いがあった。
『ONE PIECE』の声優さんたちと一緒に岩手県の沿岸部にチャリティーイベントに行く人を探しているというものだった。大好きなONE PIECEの声優さんに会えるのか!「こんなチャンスは二度とない!」と思ってすぐに行くと返事をしたが、ミーハーな気持ちで参加したことを後悔した。

現地で見た景色は、凄惨だった。震災直後よりは復興が少し進んでいたものの、やはり爪痕は大きく日常生活はまだまだ取り戻せていない状態だった。

僕は休憩時間に高台に行ってみた。傾斜面にはお墓がたくさん立っていた。
「これ全部津波で流されたった人たちのお墓でね。遺体も回収できていない人たちもいるんだよね」
現地の人が教えてくれた。その街にあったであろう何もかもが流されていた。
「僕はここへ何をしに来たんだろう…」
現地の惨状と、人々の凛々しくも淡々とした姿とのギャップに心を打たれた。そして、なんて軽い気持ちでここにきてしまったんだろうと、自分を悔やんだ。

控室にもどると、サンジ役の平田さんがいないといって、スタッフが慌てていた。
僕も探しに行くと、炊き出しの奥の方で子どもたちが50人ぐらい列をつくってならんでいるのを見つけた。「なんだろう」と思って見に行くと、そこにはひたすら子どもたちにサインを書いている平田さんの姿があった。僕は愕然とした。

「夢を与えることって、こういうことだ。」

その時、浅野忠信さんのいう「俳優として食っていく覚悟を決める」ということがどういうことがわかった気がした。

自分と一流の人たちとの差はなんだろう。
「浅野さんや平田さんみたいに夢を与えられる役者に、俺はなれるのかな…」
僕はこの道で人に勇気を与えられるような人になれる自信がなかった。

掲載日:2018年11月29日(木)

このエピソードがいいと思ったら...

この記事をお気に入りに登録

元俳優・執筆家・講演家

川口美樹(かわぐち よしき)

オールマイティに何でもこなせた。でもいつも一番にはなれなかった。自分だけのフィールドを探し続けた先に見つけたのは、自分だけの「在り方」だった。

エピソード特集