学生のころから比較的何でもそつなくこなせる方だった。
成績も、だいたいどの教科も80-90点ぐらい。でもなかなか100点が取れなかった。
「一番得意な教科は?」と聞かれても、特になかった。全部平均的に。それなりに。
サッカー部ではいつもベンチスタート。
走るのが別段速いわけでもなく、テクニックに秀でるわけでもなく、GKからフォワードまで一通りのポジションは経験したものの、高校3年の引退までついに「ここ!」というポジションも定まらなかった。
よく言えばオールラウンダーだったのかもしれないが、自分より上手いオールラウンダーは何人もいた。
器用貧乏だった。勉強でも部活でも「自分にしかできないこと」がなかった。
高校は進学校で、友達はみんな一流と呼ばれる大学を受験していたけれど、ある舞台を見たのをキッカケに、俳優の道を目指すことにした。そこに「自分にしかできないこと」があると思った。
僕の読みは外れた。芸術大学というだけあって、周りは一芸に秀でた人ばかり。僕はここでも「平均的にそれなりの」成績を全ての授業で修めることになった。結局、芸能の分野でも他人に誇れるものを見出せなかった。
「僕には何の才能もないのかもしれないな。」
何でもそれなりに出来るのに。一番になれなくて、すごく悔しくて、悶々とした日々を過ごしていた。
掲載日:2018年11月29日(木)
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川口美樹のエピソード一覧
元俳優・執筆家・講演家
川口美樹(かわぐち よしき)
オールマイティに何でもこなせた。でもいつも一番にはなれなかった。自分だけのフィールドを探し続けた先に見つけたのは、自分だけの「在り方」だった。