将来は独立しようと心に決めて、リーダーシップ研修や経営論などの勉強会に精力的に参加した。
その中である男と出会った。
「翔くん、愛だよ」
何言ってんだろう、この人……。のちに最大の恩師となるその人の第一印象はそれだった。あまりにも言っていることの意味が分からなくて興味がわいた。研修中はどんどん積極的に話を聞きに行った。
この研修では、初めて人生の棚卸しをした。何を経験し、そこで何を感じ、何を得たのか。そしてそれを、どんなことで誰に伝えていくのか。その中でおぼろげながら見出した想い。
「心の居場所のある社会を実現させたい」
でも、キレイ事を言ってるんじゃないか……。周りからも「そんなのキレイ事だ」と言われて、口にすることもできなくなった時もあった。がむしゃらに勉強をしていれば偉くなれると思った時もあった。そんな時、恩師の言葉はいつも僕の背中を押してくれた。
「スキルとかテクニックは後からついてくるけど、人の心っていうのは難しい。最初からしっかりと心の土台を創りなさい」
何度も迷いながら、それでもその想いに帰ってくる。少しずつ色濃くなっていくその想いは、確信に変わっていった。その人にはその人にしかない経験があって、その人にしか伝えられないこと、その人にしか成し遂げられないことがある。僕が生まれてきた意味はここにある。キレイ事だろうとなんだろうと、僕にしかできないことを生涯かけて貫くんだ。
あの血まみれのリビングで凍りついた心は、いつの間にか解けていた。
掲載日:2018年11月29日(木)
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プレシャスライフ株式会社 代表取締役
JFP株式会社 取締役役員
上杉翔(うえすぎ しょう)
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