姉と父の口論する声が聞こえてきた。
またか、と思いながらもリビングに入ったその時。
「お前なんか死ねばいいんだよ! 」
父が衝動的に姉に放った言葉。
その言葉に、姉は果物ナイフで自らの体を刺そうとした。
「やめろ!!!」
僕は慌てて姉の腕をつかんで止めに入った。
それでも暴言を吐き散らす父をなんとか説得しようと必死に訴えたが、返ってきた言葉は僕の心を凍りつかせた。
「お前らなんか、生まれてこなきゃよかったんだ!」
テーブルはひっくり返り、リビングには血が散乱していた。
目の前に広がる景色が現実のものとは思えなかった。まだ僕の幼い頃、キャッチボールをして遊んだ父親との思い出が霞んで遠のいていく気がした。
優しかったはずの父親は、独立して興した事業がうまくいかず、人が変わってしまった。常にピリピリとし神経を尖らせ、静かに閉めたドアのカチャリという音にさえ「うるさい!! 」と怒鳴るまでになっていた。
姉も母も限界だった。
高校3年生。新しい生活のスタートに心躍らせる友人たちの中で、僕の人生は真っ暗だった。
掲載日:2018年11月29日(木)
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プレシャスライフ株式会社 代表取締役
JFP株式会社 取締役役員
上杉翔(うえすぎ しょう)
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