それからというもの、僕はいつも平気なフリをしながら、集団生活の中でやりやすくするための術も学び、友人も出来始めました。「負けたくない」という思いだけが、精神や自身の病を凌駕していきます。しかし、心の底では全ての人を見下し、僕の心は益々闇に落ちていく一方でした。
そんな中、僕を救うべく訪れた一つのキッカケがありました。
中学校2年生。この病気を治すための治療方法が開発され、数値適合した僕は治療を受けることができるようになりました。治療は約1年と続き、週4回自身に注射器を突き立て、ホルモン剤を投与します。急激に成長する身体に栄養がついてこず、髪は真っ白になりました。身体も人よりも疲れやすく精神も不安定になります。
それでも僕の心は喜びに満ちていました。やっと夢見ていた普通の生活を取り戻すことができる…1年後僕は、見事30センチも身長を伸ばし、160センチになりました。
「やっと普通になれた。僕はこれでやっと生きる意味を見つけられるかもしれない。」
しかし目の前に広がる世界は、変わらず深い闇のままでした。突然僕と友達になりたいと言う。僕を昔から好きだったと言う。僕は何も変わっちゃいないのに、ただ見た目が変わっただけで、人の心はこんなにも変わってしまう。
「お前たちは…やっぱりクズだ。」
僕の心の闇は、思った以上に深く根強く残っていて、精神的にはまだまだ治る見込みはありませんでした。 僕の人生はどうなってしまうのだろう…全てに対する憎悪の先に、孤独と不安を抱えながら、僕はまた出口のない暗闇の中を歩くしかありませんでした。
そんな僕が22歳の時、「ある人」と出会いました。 ひと夏に何度も一緒にキャンプに行き、楽しいことばかりをしている人。しかし、とても厳しく、それでいて温かく、人のために自分の人生を使っている人でした。偽りだらけの人々の中で、初めて出会った、自分の人生を生きている“ホンモノ”の心をもつ人でした。
ある時、全てを周りのせいに、自分の病気のせいにしていた僕を、その人は真剣に叱ってくれました。
「周りがクソやと思っているなら、それはお前自身がクソみたいな人間だからだ!自分が変わらなければ、絶対に周りは変わらない。」
僕はその時初めて、良いところも悪いところも全て含めた一人の人間として接してもらえた気がしました。
「俺…変わりたいです。こんな惨めな人生…変えてやりたい!!!」
この人となら…その時僕は本気で「変わる」と決めました。
掲載日:2018年10月06日(土)
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