「踊るために生きている」
そう思うほどどんどん踊りに夢中になっていった。
バレエの世界で生きていきたい!
バレエだけをやっていきたい!
そう思い高校を辞めることを決め、それと同時にこの偽りだらけの家庭環境も辞めにしたいと思った。
殴られて殺されそうになる母。それでも別れることが出来ない。
「この家を出ないとここに依存してしまう。」
「この家を出たい。」
「家を出る!」
そう決断して初めて、母も父を捨てる覚悟ができたのかもしれないが、離婚することになった。
市に保護してもらい、そのあとは父から逃げる日々。
出会ってしまったら殺されてしまうかもしれない。
そんな恐怖と戦いながら踊ることだけは辞めずに、とうとう英国ロイヤルバレエ団のスカーラップのオーディションに合格した。
6歳の頃からそれだけを目指して頑張ってきて、本当に嬉しかった。
自分が認められた瞬間だった。
でも…
「余命1ヶ月です。」
その時母に下された診断は受け入れられないもので、ほとんど同じ時期に判明した母の癌。
英国ロイヤルバレエ団に受かったことを言い出すことすらできず、留学を辞退し、結局私は母のそばに居ることを選んだ。
掲載日:2017年05月10日(水)
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大瀧冬佳のエピソード一覧
ダンスカンパニーUzme団長
ダンサー・振付師
大瀧冬佳(おおたき ふゆか)
ダンスカンパニーUzmeの団長として様々な舞台で活躍する大瀧冬佳さん。様々な苦難の中でも、決して見失うことのなかったダンスという一筋の光。「踊るために生きていたい。」彼女を支え、突き動かした唯一無二の生きる意味が、今度は誰かの光になるように。