西村義信 Episode4:僕の本心、そして親父の愛に気づいて。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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漫画喫茶に寝泊まりして、5日目。
近くのスーパーの惣菜に半額シールの貼られるころに翌日の昼ごはんまでを調達し、帰宅……いや、漫画喫茶に戻る。
最安の席を取りおにぎりをかじりながらパソコン仕事を少し。
キリの好いところで片づけてリクライニングシートで寝ようとしたその時、頬を温かいものが伝った。

「ふかふかのベッドで寝られる……それは、当たり前なんかじゃない……」

これまでも、親には感謝しているつもりだった。
感謝はしているけれど、それはそれ。その一方で彼らは僕のことを一向に信用してくれず、
内におもいを溜めながら黙っているか、口を開けば否定や非難の言葉を浴びせるか。
僕だって人間だ。否定され続けたら心を閉ざす。
そんな関係性の両親に抱いてきた感謝、それはなんて薄っぺらかったのだろう。

「ありがとう………」

噛み締めるようにつぶやき……気づいたら眠っていたようだ。
翌朝目覚めたのはもちろん漫画喫茶だったが、僕には目に入るすべてがこれまでとは違って輝いて見えた。

ホームレス生活を続けるなかで、起業家仲間が「西村復活祭」を企画してくれた。
思いきって僕は親父を呼んでみた。
サエなくて頼りなかった子どものころの僕や、うつになり引きこもっていたころの僕のイメージで僕を見続ける親父に、
いま傍にいてくれる仲間たちを会わせ、僕を見直してもらいたかったのだ。

「親父の知っている僕が僕のすべてじゃないんだ」

親父は復活祭に来てくれた。いつもと表情が違った。僕の心のなかで何かが動いた。
一度、きちんと話してみよう。
そう決意し、翌日実家に向かった。
駅から家までの道中、これまで僕を決めつけてきた親父の間違いをどう指摘し、納得させ、論破してやろうかと考えていた時……

それは、ふとした事だった。

「俺は、親父のことをどのくらい知ってるんだ? 」

実家の扉を開き、僕は、開口一番親父に謝った。

これまで僕のことをまったく理解してくれないと思っていた親父。
けれども、理解しようとしなかったのは僕のほうも同じだった。
親父の生年月日すら記憶はあやふや。こんな僕に、偉そうに何が言えるだろう?

ごめん。ごめんよ、親父……!!!
傷つけたかったわけじゃない。言いくるめたかったわけじゃない。ずっと、認められたかったんだ。ずっと、安心させたかったんだ。
ただ、親父と僕とは別の人間で、時代も変わってしまったから、親父の思うような形で安心させることができなかっただけなんだ……。

親父との確執はその日を境に解けてしまい、僕はTLAの再生に邁進。
経営を立て直し、多くの生徒さんを輩出し、メディアからの取材も数多く受け、しあわせな毎日を送っている。
TLAを全国展開し、「恋愛教育を義務教育に入れる」という夢をいつか叶えたい。
本気の恋愛は人を成長させ、人生を変えてくれるから。

2017年2月。
親父は68歳という若さでこの世を去った。

やっとわだかまりが解けて本音で話せるようになったのに。
やっと立派な姿が見せられると思ったのに。
やっと安心してもらえると思ったのに。
やっと、少しくらいは僕のことを自慢してもらえると思ったのに。

ずっと、認められたかった。ずっと、安心させたかった。
親父は僕の自慢の親父だから。尊敬しているから。
親父ほど強さと優しさを兼ね備えた男はいない。
曲がった事が嫌いで、人望があって、退職してずいぶん経つのに150名もの方が通夜に駆けつけてくれた。

遅すぎたかもしれないけど、天国で少しくらい自慢してくれるかな?
俺の息子は大志を持って、日本の恋愛や結婚を変えようと働いてるんだぞ、って……。

自信のなかったころも、迷走していたころも、挫折して引きこもっていたころも、ずっと見守ってくれた無償の愛。
時には厳しい言葉で、時には親父自身の意にすら反した言葉で、僕と向き合ってくれた親父の愛。
心の通い合ったように感じられた期間はわずかだったけれど、気づかなかっただけで、その愛は変わらずずっとここにあった。

あなたの息子に生まれてよかった。

これが、僕の届けたいKeyPageです。

掲載日:2017年09月01日(金)

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東京ラバーズアカデミー代表

西村義信(にしむら よしのぶ)

男性向け恋愛予備校「東京ラバーズアカデミー」を経営する西村義信さん。昔の自分のような男性たちのためにと奮闘するなかうつ病を発症、その克服過程で気づいた、人生の本当の支えとは……?

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