松本佑哉 Episode3:石橋を叩き終える前に……。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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もちろん、仕事もしていたよ。
監査法人には4月から正式に入社して勤務していたものの、あまり肌に合わなくて。

公認会計士は、国家試験合格後2年の実務経験を経て、最終の試験に合格すると一人前。
僕もそのタイミングで転職活動を始めた。
監査がやりたいわけじゃないし、合わないところに長くいる理由はないからね。
新規事業開発の力がつけたくて、会計系のコンサル会社に転職。

プライベートでは、豊美姉さんを介してだけでなく、いろんな場で人脈を広げ続けた。
豊美姉さんのおかげで、お酒の入った場でのコミュニケーションが特に得意になっていた。

仲良くなったひとりとはたまたま家が近く、仕事を終えて夜のジョギングに連れ立って出ることも。
仕事が特別デキるほうじゃないけど、勢いがあって明るく、人にも好かれている奴だ。

サラリーマンでは、応援したくても契約がないかぎり助けられない。
接するのに特別な理由が要る。
自分の城を持てば、店を持てば、“気軽に集える場所”になる。
そこに集まった人を僕が助けることも、人と人をつなげることもできる。
「30になるころには店やりたいんだよね」
そんな目標も、彼や、複数の仲間に話していた。

そんな30歳の区切りもそろそろ見えてきたころ。
自分のコミュニティづくりは続けていたし、そろそろ物件探しや独立後のあれこれを考えていた矢先……。

「俺、会社辞めるから! 」
例の彼が会社を辞めてしまったのだ。
道を整えるまで先走るなってあれほど言ったのに!

出資してもらう予定の7名の仲間に話すと、「佑哉には出す。あいつには出さない」で一致。
スキルもない、特別デキるやつではない、エネルギーだけある奴だから、妥当な判断だ。
「あいつ入れたら無理やと思うで。やめろ」とまで言われたものの、そもそも僕が声を掛けた責任も感じている。
あいつひとりを路頭に迷わせるのは忍びない。

仕事関係ではコンサルタントの知り合いが多い。
彼らには
「その状態で始めるのは、コンサルタントとしてのお前の信用が傷つくぞ」
「仮にうまく行っても、飲食店1軒成功させた程度じゃ、これまでのお前の実績の足しにならない。
 大きすぎるリスクと小さすぎるリターンを考えろ」
とことごとく反対された。そりゃそうだ。

ただ僕は、1件の仕事に成功して翌年の年収がどうなるというコトにはあまり興味がなかった。
プライベートでは経営者の知り合いが多いわけで、彼らを見ていると、自分の城を持つことの意義の大きさもわかる。
何より、新規事業の専門家を名乗るうえで、コミュニティを持つ重要性は強く感じていた。

石橋を叩いて叩いて、周到に準備して始めたかった店だけど。
「最悪僕が個人でコンサル取ってくれば、家賃だけはカバーできる」

こうして僕は「Acti」の経営に乗り出したのだった。

掲載日:2018年09月02日(日)

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戦略コンサルタント、Dining Cafe & Bar Actiオーナーシェフ、公認会計士

松本佑哉(まつもと ゆうや)

ダイニングバーを経営する松本佑哉さん。料理人を志した学生時代から紆余曲折を経て東京に出た彼に大きな影響を与えたのは、ある女性との出会いでした。現在の松本さんの活動に至るまでのエピソードを振り返ります。

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