私には、なるみという親友がいた。同じホステスで働く女の子で、楽しいことがとにかく大好きだった。
そんななるみは、ある日突然いなくなってしまった。
ある日の朝、友だちからメールがきた。
「なるみが死んだ」
心停止だった。お風呂からいつまでも出てこないから、家族が入ったら、なるみは湯舟の中でもう……。
なるみは心臓が弱かった。いつ止まってしまうかも分からない状態だったのだ。私がそれを知ったのは、彼女がいなくなってしまってからのことだった。
心臓の話なんて、1度も彼女から聞いたことはなかった。
「どうして教えてくれなかったんだろう」
「どうしてなるみが死ななきゃいけないの……」
なるみとの思い出が、走馬灯のように頭の中を巡る。
仕事終わりや休みの日、時間を見つけては合コンやドライブに行った。
私の家に泊まりに来るとよく料理を作ってくれた。彼氏がしょっちゅう変わる子で、家に来たらそのときの彼氏の話を朝までした。
自由で、天真爛漫で、将来やりたいことの話ばかりしていた。
「一緒にシェアハウス住もうね」
「一緒に旅行いこうね」
なるみのことを考えると、涙が止まらなかった。
「もっとやりたいことがいっぱいあったはず……」
そのとき、私ははっとした。
「人生って、本当に1回きりなんだ」
いつ止まるかわからない心臓を抱えながら、人生を精一杯楽しんでいたなるみ。それにくらべて、仕事に追われ、何のために働いているかも分からない私は……。
これからも仕事漬けの日々を繰り返して、やりたいことを1つもできずに死ぬの?そんなの、嫌だ。このままじゃ、嫌だ……。
もっと自由に、やりたいことをいっぱいやって生きていかなきゃ。そのためには、もっと時間を大切にしなきゃ。
自分の生き方を決めた私は、結婚式場を退職することにした。
掲載日:2019年01月04日(金)
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ジュメルアンシャンテ合同会社執行役員広報部長、twins BARオーナー
門脇優衣(かどわき ゆい)
双子の姉と「twins BAR」を経営する門脇優衣さん。彼女が夢を叶えたキッカケは、大切な親友との別れと、たくさんの人との”出会い”でした。