門脇優衣 Episode1:「双子」というコンプレックス。「劣ったほう」として過ごした学生時代 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

» 門脇優衣 Episode1:「双子」というコンプレックス。「劣ったほう」として過ごした学生時代

 

“私たち”は、双子の姉妹として、同じ日に北海道で生まれた。

私の隣には、いつも双子の姉、千尋がいた。

千尋は私の1番の理解者で、私は千尋の1番の理解者だった。

小学校で、私たちはいつも一緒だった。

私には友だちと呼べる友だちがいなかった。千尋がそばにいてくれるから、それで満足していた。それくらい、千尋は私にとって大きな存在だった。

 

中学に入った私は、教科書を読みながら登下校するくらいのガリ勉になった。せっかくできた彼氏も、「勉強時間が減るから」という理由で別れるほど、勉強ばかりしていた。

学校の勉強は、私をわかりやすく評価してくれる。テストの点数や成績順位は、私がどれだけ頑張ったかをはっきり示してくれる。みんなに評価されたい、認められたいという一心で、勉強に熱中していた。友だちもいなかったし、クラスの輪にも入れなかった。引っ込み思案で、いつも目立たないように行動していた。

そんな私と違い、千尋はみんなの人気者だった。成績優秀、スポーツ万能。人付き合いが上手で、しかもかわいい。影響力が強くて、人望が厚くて……。

千尋は、私とはまるで真逆の存在だった。

「双子」という肩書きのせいで、私と千尋はどこにいっても比べられた。そして、私はいつも「劣ったほう」として扱われた。

千尋と比べられるのが嫌だった。だから私は、できるだけ目立たないようにしていた。

第1志望校を特待生で入学し、勉強に達成感を得た私は、ガリ勉を卒業した。そして、高校に入ってからはマクドナルドのアルバイトに没頭した。

私が入った職場では、みんながいきいきと、楽しそうに働いていた。

そこで教わったのが「ホスピタリティ=心のこもった接客」だった。ただ業務をこなすのではなく、お客様に少しでも喜んでもらえる、少しでも幸せになってもらうための接客。

ホスピタリティを心がけた接客をすれば、お客様に喜んでもらえる。私の接客が評価される。それが嬉しくて、楽しい。

「こんなの、学校の教科書に書いてない!」

私は接客のおもしろさを知った。

でも、続けているうちに、今の仕事が物足りなくなってくる。カウンター越しに「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」の繰り返し。

もっとお客様の手伝いになりたい、もっとお客様に寄り添える接客がしたい……。

そのとき、私は気づいた。

私、本当は人と話すのが好きなのかも……。

「人のお手伝いがしたい」「喜びや笑顔を生み出したい」そう思った私は、ウエディングプランナーを目指して専門学校に入った。

千尋もエステティシャンになるため、私と同じ学校に。それから私たちは、親に内緒で部屋を借りて、2人暮らしを始めた。

ある日、私たちは博多区にある中洲でキャッチに勧誘された。正確には、声をかけられたのは千尋だけど……。

 

「めっちゃ楽しかった!」

体験入店にいった千尋は、2時間で5000円も貰っていた。ホステスの時給は、マクドナルドのアルバイトの3倍以上だった。

お客様と話しているだけでこんなにお金がもらえる。しかも自分がずっとしたかった「カウンターじゃない接客」で……。

私もすぐにお店に入った。でも、ホステスの仕事はそんなに甘くなかった。ただお客様と話していればいいなんてものじゃない。最初はなかなかお客様が来なかった。

「ホステスって、こんなに難しくて大変なんだ……」

専門学校に通い、夜の仕事をしながら、私は先輩のバーの手伝いも始めた。

しばらく手伝っているうちに、先輩から姉妹店を経営しないかと持ちかけられた。

「バーの経営もいいな」

私は、専門学校では優等生で、1年次の時点で結婚式場の就職が決まっていた。でも、それを蹴ってバーに行きたいと思った。そこで私は、ホステスのママに相談してみた。

私はすでにバーの経営のことで心が色めいていた。けれど、ママの言葉は厳しかった。

「あなた、お客様に『外で会おう』って言われるでしょ」

「あなたに会いたくてお金を出すお客様なんて1人もいないのよ」

「あなたの魅力は若さだけ。お客様を引っ張る力がない」

ホステスに入って1年、人気が出始めていた私は、鼻をポッキリ折られた気分だった。

私に力なんてない。ママにそう言われて、その気になっていた私は急に冷静になってしまった。

私、本当にバーがやりたいのかな。

先輩に紹介されたから、それだけの理由なんじゃないかな。そっちに行ったほうが楽だから……。

結局私は、失敗したときのことが怖くなって、結婚式場に就職した。

 

結婚式場に就職してからも、ホステスは続けた。

「あなたの魅力は若さだけ」

ママの言葉が悔しくて、この世界でナンバーワンになりたいと思ったから。それに、少しでもお金を貯めたかった。

昼は式場。夜はホステス。睡眠時間はいつも2、3時間あるかないか。仕事詰めの日々の中で、「寝たい」「遊びたい」「服買いたい」そんな欲求が膨れ上がっていく……。

ふと私は思った。私は働くために生きてるの?寝たり遊んだりするために生きてるの?

「私の人生、これでいいのかな」

自分の生き方に悩んでいたとき、ネットビジネスをしている経営者の人と出会った。その人はいわゆるオーナービジネスをしていて、お金にも時間にも余裕を持っていた。

「経営者になれば、お金を稼ぎながら自分の時間も持てる!」

そんな生き方に憧れて、私は彼に弟子入りした。経営者になろうという大きな目的ができた。

掲載日:2019年01月04日(金)

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ジュメルアンシャンテ合同会社執行役員広報部長、twins BARオーナー

門脇優衣(かどわき ゆい)

双子の姉と「twins BAR」を経営する門脇優衣さん。彼女が夢を叶えたキッカケは、大切な親友との別れと、たくさんの人との”出会い”でした。

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