葦原海 Episode3:夢を追いかけた先で見つけた新しい目標 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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専門学校に入って編集ソフトと格闘する日々が続く。私の入った学校は1年制で、入学した年の夏には就職活動が始まる。色々な求人が貼り出されるけど、私がしたい仕事、テレビ局の求人は来ない。そもそも専攻と目指す業界がズレてるから当然だ。ましてや大道具のスタッフなんて。だから自分で探すしかない。

そんな折、私は知り合いのつてで、NHKの番組企画のファッションショーにモデルとして誘われた。その企画には様々な障害や病気をもつ人たちも出演する。パラリンピック開催に向けて、パラスポーツをもっと知ってもらいたい、障害者を特別視せずもっと身近に感じてほしい、って趣旨の企画だ。

私は出演することにした。でもそれは、モデルとしてランウェイを歩くことや脚光を浴びるためじゃない。

「ファッションショーに出たらテレビの現場が見れる!」

実際の現場でスタッフがどんなことをしているかを見学できる。そのことで頭がいっぱいだった。

いよいよ本番。他のモデルがポージングのチェックに専念してる。そんな中、私は裏方のスタッフの人たちの動きや段取りの取り方を目で追う。

「……あれ?」

現場を観察したり、実際にステージに立ったとき、あることに気が付いた。

観客は障害者やその家族、福祉学生や福祉系企業に携わる人たち。つまり障害をもった当事者の人や、それに関わる人たちがほとんど。なんだか違和感がある。障害者の人にもっと注目してもらうためのファッションショーなのに、本来見てもらうべき人――障害や重い病気とは無関係な生活を送る人がいない。これじゃ意味なくない?

そんな疑問が、私を突き動かした。

私がもっと表舞台に出て、たくさんの気付きを与えられる発信ができたら、もっとたくさんの人が関心をもってくれるかも。

障害者に対するイメージを変えられるかも。障害者といわれる人たちの新たな在り方を創造できるかも……!

それから私は、本格的にモデル業を始めた。事務所には入らず、フリーランスで色んな人と繋がりを広げていった。自分でたくさんの人に会って想いを伝えると、共感してくれた人が仕事を紹介してくれる。そのおかげで、テレビに出演したり、ダンサーやミュージシャンが出るイベントでMCを担当したりした。福祉やパラリンピック関係だけじゃなく、そうしたことに関心のない人が集まる一般的なイベントにも積極的に出た。

障害者だからって理由で、本当はできるはずのことが選択肢として思い浮かばない人もいるんじゃないか。そう思って、グラビアモデルも始めた。
最初は現場見学のためでしかなかったモデル活動。でも、私は私なりの価値を見つけた。

モデル業と学業を並行しつつ、テレビ局の子会社の面接を受けて編集スタッフとして新卒で入社。19歳、私はとうとうテレビ業界に足を踏み入れた。

掲載日:2020年03月19日(木)

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モデル・タレント

葦原海(あしはら みゅう)

事故で脚を失い、車いす生活を余儀なくされた葦原さん。それでも、彼女は自分の夢を諦めることはありませんでした。

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