4年間続けた昼のアルバイト先に就職したあとも、夜の仕事は続けていた。
会社組織と違って、本気でやれば女でもこの仕事なら上に行ける。
そんな希望を見せてくれた夜の街のママや先輩たちとの出会いもあり、
誇りを持って続けていた夜の仕事。
アパレルの仕事を辞めて夜の仕事一本になった時期もあったり
不動産会社に就職して自分の向き不向きの仕事があるってことに気づいたりもした。
縁あって1年ほど美容サロンの経営もした。
結果的にそこはすぐにたたむことになったのだけど、
「ルナさんが挑戦しているのを見たら、あたしにも何かできるかもって思える」
と言ってくれた後輩の女の子たちの期待もうれしかったな。
あ、「ルナ」っていうのはあたしの源氏名ね。
結果はどうあれ、あたしが挑戦することが誰かの希望になるんだ。
もしかしたら、「静岡のシャネル」があたしに夢を見させてくれたように、
あたしも誰かに夢や希望を与えられるようになっているのかな。
そんな時に、ふとした事から
これまでの経験や女性としてのオモイを文章にまとめるようになったりして。
そんな事をしていると、ライターの仕事をちょこちょこもらうようになってきた。
夜の仕事をアルバイトとして再開しながらライター業務も請け負い、ものを書く楽しさを実感し出したの。
女の子を輝かせたいと思い、「艶塾」のことを考え始めたのもこの頃。
伝えたいコトであたしの頭は溢れていた。
そうしたらね、前から縁のあった不動産会社に
女の子のための記事を書いてくれって声を掛けてもらって、
営業兼広報として働くことになったの。
学生の頃から感じてはいたんだけど……夜の仕事をしていると、
どんなに稼ぎがあっても収入証明を見せても
銀行融資も下りないどころかアパートひと部屋借りられないんだ。
前の不動産会社にいたころにも
夜の仕事で知り合った女の子たちによく家の相談を受けていたから、
自分以外のことでも痛感していた。
もとはそのころに今の不動産会社の人と知り合ったんだよね。
夜の仕事をしている女の子の賃貸に強い会社だからと、私自身の引っ越しでも世話になったし、
その後女の子たちから相談を受けるたびにあたしはその会社を紹介していた。
当時は社員でもなんでもなかったんだけどね。
その不動産会社でコラムを書いたり営業をしたりしていた矢先に、
テレビ番組の「マツコ会議」出演の話が会社に来たの。
ちょうど仕事が順調になっていた時だったから、会社の宣伝になるかも、ともちろん引き受けた。
かなり憧れの目で見られるようになってきたキャバ嬢だけれど、本当はまだまだ生きづらい現実。
クレジットカードも作れなければ保険も下りない。
アパートを借りることもできない社会的地位を語り、
あたしの関わってきた女の子たちの姿を語り……、
そう、語っていた時にね、マツコさんがほかの女の子たちに言ったの。
「ほら、こうやって一生懸命みんな働いてんのよ!!! 」
その言葉はね、あたしの心にあっという間に浸透してグラグラ動かしたの。
ちょうど前後して、前に勤めていたお店でお客様に殴られる事件もあってね。
その事後処理でもめたこともあって、キャバ嬢は早く辞めようって思っていた。
だけどね、そこで心をグラグラ動かされたあたしは思ったの。
あたしが現役キャバ嬢だからこそ伝えられる事がある。
女の子たちの直面している理不尽さも、それぞれの背景がちゃんとあるんだってことも、
もちろんキャバ嬢だからこそ培われるスキルやステキな面も、全部伝えてゆかなくちゃ。
それが今のあたしにできるコト。
次にキャバ嬢を辞める時は寿退店!!
そう決めたのは収録の真っ只中、マツコさんの一言に打たれたその時だった。
掲載日:2017年06月02日(金)
このエピソードがいいと思ったら...
青木人生のエピソード一覧
株式会社クレスタ営業兼広報担当
青木人生(あおき ひとせ)
自分らしく輝く女性たちを輩出する「艶塾」に、ナイトワークの女性向けの不動産会社でのライター業務を手掛け、しかも、現役キャバ嬢。パワフルに活動する青木人生さんの尽きせぬ原動力とは……?