青木人生 Episode4:履歴書に「クラブ○○」と書ける社会を。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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マツコ会議の収録とは前後するんだけど。

あたし、10年キャバ嬢やってきて、初めて殴られたの。

初対面のお客様にいつも通り接客していて……
あたしを殴ろうとしたわけじゃなかったみたいだけど、結果巻き込まれて殴られちゃったの。

まず何が起こったのか理解するのに時間が掛かった。
男の人に殴られるんだよ? DVでも何でもない、見ず知らずの男に。
もーびっくり! マジ動揺!

整形外科に行ったら、先生、落ち着いていてね。
「警察に出すことになるかもしれないけど」
なんて、手馴れた様子で診断書を書いてくれて。

夜の仕事で女の子が殴られるなんて、先生にとっては“あるある”事例だったみたい

店に診断書を持って行ったけれど、対応が二転三転。
労災が下りるだの下りないだの、傷害保険を申請するだの。

でね、そうして下りた保険金を店が一向に払ってくれなかったりして。

その店の母体になっている会社宛てに弁護士から内容証明を送ってもらったら、
さすがに慌てたみたいで……。
1ヶ月も経ってやっと保険金を受け取れたけど。

正直、保険金なんて大した額じゃなかったの。
あたしは保険金のために戦ったんじゃない。

あたしはあたしの両肩に、
過去にこの仕事に従事した女の子たちと
将来この仕事に従事する女の子たちを感じていた。

お医者さんにとっては“夜の仕事じゃあるある”な事件に遭いながら、
戦わずに泣き寝入りする女の子が、これまでどれだけいたんだろう。

あたしが戦わないことで、この先どれだけの女の子たちが泣き続けることになるのか。

そう考えた。

普通だったら傷害事件。警察の入ってくる事件だよね。
なのにあたしには殴ったお客の名前すら明かされなかった。
女の子はいつか辞めるけれど、お客はお店に通い続けるから……、
だからお店はお客を守るんだろうなって思った。

マーボー豆腐は飲み物です。
それならば、キャバクラ嬢は生き物です。
そして、オンナノコです。

あたしはね、
夜の仕事をしている女の子たちが当然の権利を行使して
堂々と生きられる社会が見たい。

もちろん生きて働いていたら嫌なコトもあるけれど、
夢や守るべき存在のために誇りを持って仕事をしているのなら
家も借りられ、カードも作れ、職歴を偽ることなく履歴書が書け、
殴られたり事件に巻き込まれたりしたらきちんと警察に介入してもらえる。

一個の人間として、社会人として、尊厳が尊重される。

そんな当たり前の社会が見たい。

そして、それは夜の仕事の女の子たちだけの話じゃないと思うんだ。
すべての女の子たちに、
女の子に生まれて好かった、女の子だからこんなコトができた、と言ってほしい。
大好きな人と過ごして、大好きな人の子どもを産んで……。

男と肩を並べるというのは、張り合って並べるんじゃない。
男と女にできるコトはそもそも違うのだから、
ともに人生を歩んでゆく、という意味で肩を並べてほしいな。

自分らしくステキに生きる女の子が増えるようにと「艶塾」を立ち上げたのも
キャバ嬢のキラキラした面だけじゃない実情を発信してゆくのも
それでも底力を発揮して生きてゆく女の子たちを応援するのも

全部ひとつなんです。
あたしは女の子に輝いてほしいんです。
女の子の力を信じているんです。

女手ひとつであたしを育ててくれたマミー。
夜の世界で働いて子どもを育てながら、水商売への偏見から自由になれなかったマミーにも……
履歴書に「クラブ○○」と書ける日本を見せてあげたい。
立派に生きた経歴なんだから……って。

そんな未来のために。

これが、あたしのKey Page……。

掲載日:2017年06月02日(金)

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株式会社クレスタ営業兼広報担当

青木人生(あおき ひとせ)

自分らしく輝く女性たちを輩出する「艶塾」に、ナイトワークの女性向けの不動産会社でのライター業務を手掛け、しかも、現役キャバ嬢。パワフルに活動する青木人生さんの尽きせぬ原動力とは……?

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