いったいなんだってマミーは、あたしをこんなお嬢様学校に入れたかったんだろ……。
マミーの思いに応えたくて、正直したくもなかった受験をして、
生活費を浮かすためにおばあちゃんの家に引っ越してまであたしが入学したのは、
中高一貫のいわゆる「ザ・お嬢様学校」だった。
社長令嬢なんて普通にいた。
そうでなくても、両親が揃っていて経済的にもそう不自由しない女の子たち。
それがあたしの同級生だった。
本当のお父さんの顔も覚えていないあたし。
マミーが女手一つであたしを育てていたから、
修学旅行前の集金みたいなお金に関するお知らせを持って帰るのもなんか苦痛。
そんな学校の中でなんだか場違いに感じたこともあったけれど……
あたし、そこでひとつ心に決めたコトがあった。
このクラスで一番稼げる女になってやる。
マミーの出勤するころにあたしはいつも帰宅。
朝はカーテンも締め切った薄暗い部屋にぽつんと置かれた、
お弁当か昼食代。
あたしはいつも思っていた。
離婚した女性がひとりで子どもを育てることが大変な社会って一体なんなの。
あたしは稼げる女になろう。仮に女一人でも苦労しないくらい稼げるようになるんだ
そんなあたしに天は必要な出会いを用意してくれていた。
中学2年の時に、職業体験ってあったんだけど、
あたしは街の洋装店に2週間ほどお世話になったの。
そこを切り盛りしていた女性が、もうね、とにかくカッコよかった!
女手ひとつでふたりのお嬢さんを育てて、オートクチュールの洋服を扱う洋装店を支えていて。
「静岡のシャネル」ってマミーは呼んでたっけ。
何がステキかって、働いている姿はもちろん、
過去の苦労をみんな笑い飛ばしちゃうその人生に対する姿勢にあたしは惚れちゃったの。
マミーは、どちらかというと大変な事をそのまま大変と表現する人だった。
きっとそれには理由があったんだろうと思っていたけれど、それがちゃんとわかるのはもっと先の話。
あたしはね、同じ苦労するなら
苦労を苦労と思わないような、どうせなら人生のネタにしちゃうような女性でありたいと思ったの。
苦労も理不尽も何もかも笑い飛ばして、今日を、そして未来を生きる糧に変えて、
力強く生きてゆきたい。
そんな女になりたい、とあたしは未来に誓ったんだ。
掲載日:2017年06月02日(金)
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株式会社クレスタ営業兼広報担当
青木人生(あおき ひとせ)
自分らしく輝く女性たちを輩出する「艶塾」に、ナイトワークの女性向けの不動産会社でのライター業務を手掛け、しかも、現役キャバ嬢。パワフルに活動する青木人生さんの尽きせぬ原動力とは……?