東京でのシステムエンジニアとしての就職。理系で物覚えもいい僕の適正として、間違ってはいなかった。

パソコンに向かってサクサク仕事を終わらせ、定時退社する。
休みの日は動画サイトを見るかゲーム漬け。夕方時計を見て「また明日から仕事……ヤダな」とため息をつく。
「昇給ってどのくらいなんですか? 」
「1年で2千円くらいかな」
10年いても2万円しか給料変わらないのか……と愕然とした。
パソコン仕事ばかりで、コミュニケーション能力も落ちている気がする。
決められたレールの上にしかいられない感覚。毎日モヤモヤしていた、そんな時――

小学校の同級生から突然連絡が来た。
「久しぶりにメシでも食おうよ」
新宿で待ち合わせると、相手は40分遅刻! 正直、帰ろうかなと思ったけど。
再会した彼はやたらキラキラ、イキイキしている。うるさいくらい輝いている。
ちょっと煙たい一方で、うらやましかった。同い年の彼と僕、何が違うって言うんだろう?
聴くと、大きな影響を与えてくれる方がいるそうだ。
師匠なんていうからうんと年配なのかと思ったら、僕らより2つ、3つ上だという。
「これ読んだら人生変わるよ。あげるから、読み終わって興味あったら連絡してこいよ」
読んだらその人を紹介してやる、と。
家で動画サイトとゲーム以外に時間を使うことなんてなかった僕。
その『金持ち父さん貧乏父さん』をひと晩で一気に読んだ。
「こんな考え方があるのか! 」「定年まで雇われるだけが人生じゃないのか……」
ワクワクした。同時に、「そのために何したらいいんだろ? 」という戸惑いも生まれた。

そうして、そのお師匠さんに会わせてもらった。
それがキッカケで、副業で広告代理店事業を始めた。人ともっと関わりたいと思うようにもなった。
定時ダッシュして家でゲームするだけだった僕が、SNSの集まりを探して顔を出すように。
週末はその師匠の紹介でセミナーに出席。前向きで主体的な人が大勢いる。
「何かに没頭して、夢中になって生きてるのって、ステキだな! 」
参加するセミナーではしばしば「自分が源」ということが言われる。
すべては自分が原因になっていると言われても、最初はピンと来なかった。
自分じゃどうしようもないことだって、世の中にはあるじゃないか……。
そんなある日。
よく連絡を取る友人と会っている時に、ふと思いついて普段よりリアクションを大きくしてみた。
普段よりちょっと大きく驚いてみせたり、前のめりになって頷いてみたり。
結果、彼はいつも話さないような深い心の奥をさらけ出してくれた。
相手は何も変わっていないのに。
「自分が原因、源って、こういうことか! 」
考えてみたら、赤の他人でも、電車内でイライラしている人を見るとこっちもイライラする。
自分のあり方が他人に影響しないなんてことは、ありえないんだ。

代理店事業も夢中になってやった。
集まりに参加するだけじゃなくて、僕自身がイベントを主催するようにもなった。
そもそも人と会うのが楽しくて、営業を忘れて楽しんでおしまいというのがほとんどだったけど。
決められたレールの上にしかいられないと思っていた僕の価値観が、どんどん変化していった。
「何かに没頭することで、人生は創り出せる。楽しさや価値は、人生は、自分で創り出せるんだ! 」

その後、彼女という“没頭”の対象が出来たので、代理店事業はやめたんだけど。
営業職に転職したり、またエンジニア職に戻ったりしながら、副業でシェアハウスの運営も経験。
最初から結婚するつもりだったので、シェアハウスをやりながら彼女とも入籍。
やってみたいと思った事はやってみるし、違和感が生まれたら執着せずやめる。

そんな時、工学系の大学に通っていた弟が就活に悩んでいることを知った。
内定の取れないまま卒業を迎えてしまうとのこと。
工学系ということで、コミュニケーションは苦手なほう。だけど、素直でとってもイイ奴だ。
「何か力になってやれないかな……」
そう思って僕は、昔エンジニアとして勤めていた会社に連絡した。
