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キッカケインタビュー

平均月収1万5千円以下という日本の障害者の現実に挑んだキッカケ

日野信輔(ひの しんすけ)

株式会社Nextwel(ネクストウェル)代表
ポータルサイト「Welsearch」編集長

この鍵人のコンテンツ:

キッカケ記事

いま何やってるの?
福祉×Webマーケティングの視点で、障害者自立支援のために活動中。障害者・支援者に役立つ福祉情報サイトWelsearchの運営、障害者へのアウトソーシング・障害者プロデュース事業なども手掛けます。

友人の死をキッカケに、限りある人生を思い切り生きると決めた。
野球一筋の生活を終え、思いがけず知った障害者雇用のあまりに厳しい現実。
自立支援を実現させる夢を追い続けて。

キッカケ①:友人の死を境に、20歳で「生」を見つめ直す。

身近なところに、障害を持った方のいる家庭がありました。
どこに行くにも親や家族が付き添い、手助けをしていて。

「親がいなくなったらどうやって生活するのだろう?」
「一生を施設で過ごし、国の保護を受けて生きるのだろうか?」
僕の頭の中には、漠然としたそんな疑問がありました。



僕自身は、兄の影響で始めた野球一筋の生活を送っていました。
小学校から大学まで野球、野球、野球……関東大会優勝まで行ったこともあります。

高校の部活引退のあとも受験勉強をあまりしなかったため、見事不合格。
その後一浪して都内の大学に進学しました。

何かがしたい。

でも、自分のやりたいことって何だろう。

20歳になった僕は、夏休みに青森の親戚の家にいました。
僕は何がしたいんだろう……のどかな田舎風景を眺めながら漠然と考えていた時。
突然の知らせが入りました。

友人が事故で亡くなった、と……。

20歳という若さでこの世を去ってしまった友達。
知らせを受けた時には、冗談でも言われているような気がしました。

けれども、実際に事故現場に駆けつけて……そこには「死」がありました。「死」を肌で感じました。

冗談じゃない。他人事でもない。数日前まで生きていた友達の死という現実。
死って、こんなにすぐそばにあるんだ……。

リアルな死の経験は、僕に「生きること」を見つめ直させてくれました。

限りある自分の人生を楽しみたい。
やりたいことを実現させるんだ。

20歳の僕はそう決意したのでした。

キッカケ②:衝撃的な数字を知って、変化した世界観。

大学4年になり野球部も引退、就活もしたけれど、本当にやりたいことは何かという問いには
まだはっきりした答えが見えていませんでした。

とにかくがむしゃらに、自分から積極的に動きました。

SNSで学生起業家の集まりに参加し刺激を受けたり様々な事を学んだり、
作った名刺を授業の講演に来ている企業の経営者の方に勢いで渡したり。
時には相手にしてもらえないこともありましたが、とてもよい経験になりました。

ある日のこと。ふとした事から参加した別の学部の講演会で、
障害者雇用に関するある事実を知りました。

彼らの平均月収が15,000円以下であること。
日本における障害者の法定雇用率が半分以下であること。

後者に関しては例えば、現在50人以上の一般の民間企業では全従業員のうち2%は
障害者の方を雇うことに法律上決まっているのですが、
それを達成している企業は半分以下だということです。

「月15,000円!? そんな……そんな事って……!?」
あまりにも衝撃的な事実。
障害者のいる家庭を見て昔抱いた「親が死んだらどうするんだ? 」という疑問も、再び頭をよぎりました。
具体的な数字を伴ったその衝撃は、僕を行動に駆り立てるに十分でした。

正直な話、それまで福祉分野には全然興味がなかったのですが、
そこから少しずつ勉強をしたり障害者の方と触れ合える場に足を運んだりしました。

昔は障害者の方に対して「なんだか怖いな……」と偏見を抱いていたところもありましたが、
実際に接し、楽しい時間を持つ機会が増えるにつれ
「僕がリアルな彼らを知らないだけだったんだ」と腑に落ちてゆきました。

大切なのは関わるキッカケと、高いアンテナを張ることなのだと知りました。

また、ある時。

ずっと野球を続けてきたので、一時期地元でよく通っていたバッティングセンターがありました。
そのバッティングセンターの近所にある会社が、
多くの障害者の方を雇用しており、安定した高品質のチョークで業界一位のシェアを占めている会社だった、
と知りました。
『日本でいちばん大切にしたい会社』という本にも取り上げられているのです。

そんな会社が近所にあったのに、僕は福祉分野に興味を持つまでその存在すら知らなかった。
本人が福祉や障害者支援に関心を持たない限り、
そんな誇るべき企業があるのに近所の住人にすらその存在も意義も知られないなんて。

自分自身が障害者のリアルを知ろうとすることのほかに、
「障害者雇用や福祉について一般の人の知るキッカケを増やす」ことの必要性を感じました。

その企業のことを取り上げた本の著者が僕の大学の大学院教授だったこと、さらにその会社が地元にあったことも
自分の思いを後押しするような縁だと感じられました。

彼らの雇用のあまりにも厳しい現実を知ったのを境に、僕の人生観はガラリと変わりました。

なんとか現状を変えたい。
彼らが社会と関わりながら自立できるシステムを作りたい。
これこそが僕のやりたいことなんじゃないか。

人生のひとつひとつの点が線になったようでした。

キッカケ③:忙しさの中で忘れていた思い、再び大切な人を失って……。

自立支援への思いは強くなりましたが、その時にはすでに就職が決まっていたので、
通信関係のベンチャー企業に入社し営業をしました。

少ない休みを縫って活動はしていたものの、圧倒的に時間が足りなくて。

その年の6月、梅雨の頃。
小学時代からの親友が亡くなったという電話がありました。

学生ながら海外を渡り歩いていた彼は、
自分にはない考えや世界を教えてくれた人でした。
就活の時も情報交換をしたり、目標を語り合ったりしていました。

それなのに入社後毎日毎日仕事に追われていた僕は、その友人に会う機会もなく、
自立支援のことも何もできていない状態。

かつて友人の死に際して抱いたはずの「自分の人生を楽しもう」という決意すら、忘れかけていました。

親友の死をキッカケに、
「仕事が忙しいから」という理由でやりたいはずのことから逃げていたと気づきました。

このままではいつまで経っても始まらない……。

僕は、会社を退職しました。

まず自分がマネタイズできなければ
障害者の方に仕事を回すこともできない。
退職前から動いてはいたのですが、退職後は本腰を入れて、Webを活用していろんなチャレンジをしました。

転売、アフィリエイト、Twitterや動画サイトでの広告収入の産出など。
Twitterは150個くらいアカウントを作成して集客、月10~20万円もの収入を得ましたが、
3か月ほどですべてのアカウントが凍結されました(笑)

他の投資も行っていたので、手元に残ったお金はなし!

結局失敗してしまったわけです。が、収穫はありました。
Webの活用と障害者雇用は相性がいいのでは? そんな手ごたえを感じました。

また、最初は「自分のため」「稼ぐため」にしていた発信も
「見てくれる人のため」「価値の提供のため」という視点へと変化していきました。

すると不思議なことに、徐々に物事がうまくいくようになりました。

純粋に収益が上がるようになったし、それだけでなく
Webを使った集客について教えてほしいという依頼がどんどん増えていったのです。
個人を相手にしたアフィリエイトから店舗さんや実業家の方たちにWeb集客を教える方向に
シフトしてゆきました。

そうした情報発信を通じたマネタイズの方法を障害者の方にも教えようとした時期もありましたが、
例えば発達障害の方の多くにはそうした作業が向いていても
障害の種類によってはひとつの作業に集中するということに向かない人もいます。

それより障害者ひとりひとりのびっくりするような……絵が上手いとか、記憶力がとんでもないとかいった才能を僕が見出だし、
Webを使ってプロデュースするような形のほうがよいのではないか。

わかりやすいスキルや才能が今のところ見えない障害者の方には、
データ入力や事務作業などの仕事を僕が取ってきて外注するような形はどうだろう?

少しずつ少しずつ……障害者自身がこの日本で自立して稼ぐ方法が見えてきたのでした。

キッカケ④:まずは知ることが、現状を変える第一歩なんだ。

ようやく、障害者の方の自立できる生活を生み出せる仕組みが現実になっていきました。
これこそ僕がやりたいと思ってきたもの。

今では、もっともっと自立支援の仕組みを安定したものに、
というクリアなビジョンが見えるようになりました。
食と障害との関係性にも取り組んでいるところです。

でも、まだまだ多くの課題があります。

福祉の仕事をしていると伝えると、「大変だね」とよく言われるのですが、
それはこの業界で情報発信する人がすごく少ないためでしょう。

ニュースになることといえば、事件や職員の労働条件の悪さなどのネガティブな話ばかり。
でも福祉関係の素晴らしいニュースって、実はたくさんあるのです。

また、例えばバリアフリーに対応しているお店がわからなくて
車椅子の方が引きこもりになってしまったり……
障害者関係における生活のことや仕事のことで役に立つ情報がすぐ調べられるサイトがなかったので、
ポータルサイト「Welsearch」を立ち上げ情報発信の場を作ることにしました。

先にも触れたとおり、障害者の方の中には、すごい才能を持っている方がいます。
一度見たら忘れない抜群の記憶力とか、
プログラミングがものすごくできるとか。

残念なことにそのすばらしいスキルの多くは埋もれてしまっています。
その才能を活かすことができたなら……
彼ら自身のスキルで社会に貢献できたなら……

彼らは自らの力で社会とつながることができる。
そのことを多くの方に伝えたいし、必要な手助けを提供したいのです。

すべてがそうではないのですが、
「障害者の商品だから」と安い単価で商品を売っていたりするところも多いという現状があります。

それは彼らにとってどのくらい意味があることなのだろう。
本当にそれでいいのだろうか……。
そんな思いがぐるぐると頭を駆け巡りました。
そんな疑問が、才能を持った障害者の方をWebを使ってプロデュースするという現在の事業につながっています。

もちろん、特別な才能があるというわけではない方も多くいます。
そのような方を含め、当社の提携している企業には現在6,000人ほどの障害のある登録者がいて、
彼らに仕事をアウトソーシング(委託)しております。

引きこもりになってしまった方でも、この仕組みなら在宅で好きな時間帯に仕事が可能だから。

そして当然、仕事として請け負うからには品質も確保しなければいけません。
品質管理部門を設置し、取引先の方に安心して発注いただける体制を整えています。

まずは、障害者雇用の現実をみなさんに知っていただきたいのです。
今すぐ何か行動しないといけない、なんていうことではなくて。
「知っている」
と「知らない」の差はものすごく大きいはずです。

一人でも多くの方が福祉の現状に少しでも興味を持ってくださったら
これほどうれしいことはありません。

限りある人生、みなさんも僕自身も、悔いなく人生を楽しめる。
そんな夢のような社会は、まずは知り、想像することから始まっていくのだと思います。

これが、僕のKey Page。

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掲載日:2017年11月10日(金)

鍵人No.0077

日野信輔(ひの しんすけ)

神奈川県川崎市出身。友人の死に直面し「人生を楽しむ」「やりたいことを実現させる」と決意し起業。Web集客の手法を活かして障害者自身で収益を上げる方法を伝えたり、在宅の仕事を発注したりするなど、日本の障害者雇用や障害者の経済問題の現実に正面から取り組んでいる。

株式会社Nextwel HP : https://nextwel.co.jp/

Welsearch HP : https://welserch.com/

アウトソーシング提携先企業・VALT JAPAN株式会社 HP:http://valt-japan.com/

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