牛尾佳子 Episode1:完璧でなければ愛されないと思っていた。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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「完璧」でなければ愛されないと思っていた。

老舗の料理店の長女として、「仕事」の中で育っていった私。
10歳の頃には着物を着て看板娘として働いていた。

恥ずかしくない接客をすること。完璧でいること。
大人に囲まれ、「仕事」の中で育った私は、
子ども心をうまく表に表すことよりも先に、大人の振る舞いを身に刷り込ませていった。

うまく人に甘えることができなかった。
失敗の許されない、物わかりのよい長女。

愛嬌がよく甘え上手の弟と素直に振る舞えない自分を比べてしまう。
完璧にしているのに、弟のほうが可愛がられる。
だからといって、期待通りに完璧に振る舞うことをやめるなんて、怖くてできない。
「完璧でないと、誰も私を受け入れてくれない」
そんな気持ちを抱いていた。

人の期待に反する事ができないから、
知らない事を、知らないと正直に言えない。
出来ない事も出来ないと言えない。

特別可愛いわけでもない。
特技を持っているわけでもない。
加えて、吹き出物だらけの肌と太った体。
毎日、鏡で自分を見るたびに憂鬱だった。

綺麗になって自分に自信が持てるようになりたい、と
皮膚科、化粧品、エステ……ニキビに効くと聞けばなんでも試すも一向に消えない、
肌に広がる憎い、赤いブツブツ。

自信の持てない私は、何かあるたびに見た目のせいにしつづけた。

「どうせ見た目がこんなんだから。肌が綺麗だったら誰からも好かれたのに」

自分の存在価値を考え続けた。

社会人になっても続く、満たされない思い。
朝から晩までがむしゃらに働いても、今の自分の先に幸せな未来なんて描けなかった。
外車を買っても、ブランドものに囲まれても、手に入れた時の喜びは一瞬で、
また気づけば「価値のない自分」に戻ってしまう。

いつも心が乾き、虚しいスキマ風が吹いていた。

次第に、やるせない感情を、自分を痛めつける行為で上塗りし誤魔化すようになる。

「どうせ私なんてダメな人間だもの!」
自暴自棄になり、食べては吐いて、吐いては食べる。
吐いている時の情けなさといったら。
罪悪感を背負いながらも、止められない。
気づいたら摂食障害になっていた。

何をしても満たされない心の隙間。
満たされない毎日を満たしてくれるものを探し続けた。

……人から必要とされたい。
……ただ、人から認められたい。

無価値感という乾きを少しでも潤したくて、
心の割れ目のスキマを埋めるように、たくさんの男の人と遊んだ。

誰かからの愛が欲しかった。
“愛されたくて”たまらなかった。
食べ物を自分の中に詰め込んで吐き出すのと同じように、
遊んでは吐き出して、無意味な恋愛もたくさんした。

乾いた自分という砂地に染み込む、束の間の慈雨のような恋愛。
男性に求められることは、自分が自分の価値を見出せたような気分になれる
わずかな救いだった。

皮肉なことに、
愛されたいと思えば思うほど、DVを受け、お金まで騙し取られる。
どうして? ただ、愛してほしいだけなのに……。
惨めだった。

同時に、自分のことを大切にしていない状態にも気づいていた。
「こんなんだから、愛されなくても当然」と
どこかで自身を卑下している私もいた。

「結局、私はダメなんだ」

自尊心がまた、
一枚、一枚と、剥がれ落ちていく。

開いてしまった傷口に
「惨めな自分」が刷りまれていく。

そんな事を繰り返した20代後半、ようやく出会えた優しい夫。
会社を辞め、引っ越し、私の実家の家業を継いでまで、人生を共にしたいと言ってくれた。

ウェデイングドレスを着て、みんなに祝福されて。ハッピーエンドにたどり着いたんだ!
周りからは何一つ不自由なく映っているはずの、「勝ち組」の人生。
結婚することで幸せになれる。そう信じていたのに。

子宝にも恵まれ、一見幸せな人生を歩み始めた。
なのに、なぜか何かが満たされない日々。

継いだ家業の第一線からは退きつつも手伝いは続けながら、
子育てメインの生活。
「このまま私の人生終わるのかな? 」とぼんやり考える。

34歳、子育てにも慣れてきたころ。

幼稚園への送り迎えの時に、ある人とすれ違った。
思わず声を掛けた。肌があまりにも綺麗で、黙っていられなかったのだ。

「あなたのような綺麗な肌になりたいんです……!!!」

その人に紹介された化粧品を揃え、正しいスキンケアを続けると、
見る見るうちに、肌の状態が劇的に改善されていったのだ!

信じられなかった。
「私は変われる!やっと変われたんだ!」

肌が変わったことで気持ちも前向きになった。
綺麗になった自分を見てもらいたくなり、人前に出るのも嬉しくなった。

これまで沢山の時間とお金を費やしたのに、こんなに簡単に変われるなんて。
今までのスキンケアが間違っていたのだ。無知だった自分を恥じて、悔しくもなった。
肌が変化したというこの感動を人に広めたくて、
私は美容の世界に飛び込んだ。

幼い頃から働いていたはずの私。
「自分でやりたい」と心から思える仕事に出合えたのは、生まれて初めてだった。

目の前に希望の光が差していた。
「ようやくこれで自分の人生の舵が切れる!これが私の生きる道!」

……そう信じて始めた美容の仕事だったのに。
これで鬱々とした人生から解放され、進む道と自分に自信が持てると思ったのに。

やっぱり、仕事でも家庭でも人間関係でも上手くいかない。
どうして? なにがダメなの?
こんなに頑張っているのに……。
一体、何が足りないっていうんだろう。

あと何をすれば、成功するんだろう。私は満たされるんだろう。

掲載日:2018年03月29日(木)

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ニキビ専門エステ「八王子ニキビ研究所」代表

牛尾佳子(うしお よしこ)

ずっと自分に自信の持てなかった牛尾さんが自分を愛せるようになったきっかけは、「誰かに幸せにしてもらう」事をやめ「自ら未来を作り出そう」と決めた時でした。

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