小学6年次にも同じ英語劇に携わったのち、中学ではなぜか陸上部に。
おしとやかなキャラクターの抜けきっていなかった私はひとりで何かを決めることができず、仲の好い友達の入った陸上部に入部してしまった。
それはそれで楽しかったのだけれど、やはり舞台に立ちたいという気持ちを忘れず、高校は演劇部で選んだ。横浜市の小ホールが好きなだけ使える演劇部。大会で結果を残すことはできなかったが、仲間と一生懸命になることができた演劇三昧の高校生活がしあわせだった。
毎日中庭で走りながら
「あえいうえおあお、かけきくけこかこ……」
「あいうえおいうえおあうえおあい……」
と声出し。
はたから見ると変態的な稽古ぶりだったと思う。けれど、そんなことでも真剣に楽しくできてしまう演劇が楽しくて楽しくて、夢中になって駆け抜けた。
とはいえ悩みもあった。
当時は、すばらしい役者の方々は、役を自分に憑依させる、というか、完全に役に成り代わってしまえるような、素質を持っているのだと思っていた。自分にはどうしても、その感覚がわからず、これからもわかるとは思えなかった。自分がそのまま、与えられた役の代わりに舞台に立ってしまっているようで、私自身満足できなかった。
掲載日:2018年11月28日(水)
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役者
鈴木夢(すずき ゆめ)
おしとやかだった女の子がたましいの求める生き方に気づき、殻を破ってがむしゃらに邁進してゆくストーリー。「おばあちゃん役者になった時が楽しみ」と笑う鈴木夢さんの笑顔と行動力の秘密は……?