進谷憲亮 Episode2:家族や仲間に支えられて。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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「受かったこれからが大変」という言葉に活を入れられ、
高1の時は毎日午前3時まで勉強して、学年7位あたりをキープ。休み時間はだいたい机で寝ていた。
同時に2つの事のできない不器用な人間で、
2年でバスケ部のキャプテンになってからは150番台までガタ落ちしたけれど。
部活に勉強に、基本的にまじめな高校生活を送っていた。まじめなことがイイ事だと思っていた。

そんな中で迎えた修学旅行。
行きのバスでは、後列ではしゃいでいる友人達をよそに、前列で寝ていた僕。
夜の集まりで「進谷くんは優しいけど、ノリが悪い」という女子からの評価を知って、行動を変えた。
帰りのバスでは後列の友人達に交ざり、マイクをつかんで、DA PUMPの「if…」を熱唱。
それまで被っていた殻を破る経験だった。

優しいことやまじめなことが悪いわけやないけど、今、僕に求められているのはノリなんだ。
これまでは人前で歌ったり、はしゃいだりする事が得意ではないし、あまり好きではなかった僕。
いざやってみると、その場の盛り上がりに喜びを感じている自分に気づいた。
そして、それを楽しんでいる自分もいた。

自分がこうだと決めつけていた自分以外にも、自分は色んな顔を持っている。
自分自身のことであっても、知らない事がたくさんあるんだ。
人との交流を通して、自分の新しい面を見つけていくのだと知った。
新しい人との出会いは自分というパズルを完成させるためのピース集め。
人との繋がりの楽しさ、そして、人生におけるその大切さを改めて実感する様になった。
人のこと、そして、自分のことがもっともっと好きだと思える様になった。

進路はK大学の医学部医学科を目指していた。成績は思う様に伸びず。
冬になって塾に通い始めたけれど、センター試験は自己採点でC判定だった。
希望のK大学医学部医学科は、二次で挽回するのも難しい。
合格圏内のN大学に変える様担任に勧められ……。

とたんにやる気が出なくなった。N大学の良し悪しじゃない。
一度決めた目標を変えてしまったことが原因だった。
「行きたいとこがあるなら浪人したら」と親は言ってくれるけれど、
弟がふたりもいるのにこれ以上お金を掛けるのも……。

そんな時に背中を押してくれたのは下の弟だった。
ポロっと相談をした時に、間髪入れずにこう言ったのだ。
「受けたいとこ受けたらいいやん。浪人したらいいって言ってくれてるんやし、したらいいやん」

一度きりの自分の人生、自分の思う様にしたらいいやん。
その言葉に勇気付けられ僕は浪人覚悟での志望校受験を決意。
結果は、前期不合格。後期はK大学の別の学科に合格した。

いざ合格すると今度は迷いが生じる。
親に余計にお金を出してもらって浪人して医学部医学科を目指すのか、現役で別の学科に進むのか。

中々決心がつかずにいたある日のこと。友だちの家から帰宅すると、今度は上の弟が
「兄ちゃん、今日、K大の学長さんから電話あったよ」と言う。
「今日までに入金しないといけないって」
「マジで?何て言った?」
「断っといたよ」
なんと。面食らう僕に、弟は続けた。
「うちの兄は来年医学部医学科受け直して医者になるんで、今年行かないです、って。
だってそうやろ?」
わが弟ながら流石だと思う。

ふたりの弟の言葉、家族の応援……高校受験の時と同じだった。
僕の夢を僕以上に信じ、応援してくれる。

浪人中は家にいても誘惑に負けると思い、予備校の寮に入り、文系理系問わず集った仲間と切磋琢磨。
誕生日の友だちがいるとサプライズで祝っては、
夜中に苦情が出るほど盛り上がって寮長室に呼び出されたりした。

またまたやってきた受験シーズン。
2回目でもやはり慣れないあの試験会場の張り詰めた空気。
センター試験1日目終了時の手応えは……「やばい。地理で失敗したかも」

2日目を終えてすぐに寮に戻り、自習室で自己採点。
結果は、予想に反して得点が取れていた。
「やった」ホッとした溜め息と一緒に、思わず、小さな喜びの言葉が口から漏れた。

その瞬間、机の向こうから人影が。寮で共に過ごす友だちが泣いて喜んでくれた。
「しんちゃん、センター試験1日目が終わってからずっと落ち込んでたから。
大丈夫かなーってずっと心配だったよ。よかった、よかったよ……!!!」
思っている以上に不安が顔に出ていたらしい。

1年間の浪人生活も、共に過ごした友だちのお陰でかけがえのないものとなった。
信頼する友だちをさらに増やして、僕はK大学医学部医学科に進学。
晴れやかな気持ちでその門をくぐったのだった。

掲載日:2018年12月03日(月)

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