大里千尋 Episode4:人は違うからこそ支え合える。今、仲間と叶えたいこと、子どもたちに伝えたいこと。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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もうひとつ、大きな支えとなったのは、ある友人の存在である。

東北にボランティアとして向かう時、勇気を出して高校からの友人を誘ってみた。
これまでアクションを起こす時はたいてい一人、思うことがあっても外に出せずに抱えてきたけど、同じ体験を通してその子は何を思うのか知りたいと思ったから。

彼女の返事は、「私も行きたいと思っていた」。
その言葉を聞いて、思いを口にしたっていいんだと自信を持てたのだと思う。

私はいろんな場所に行ったけれど、彼女は宮城県北東部の雄勝(おがつ)でずっとボランティアを任されていた。
そこは一番被害が大きく、集落自体が消えてしまった地域。
家族が何人も犠牲になった被災者の方々がたくさんいる。自分をしっかり保たないとやっていけない場所だ。
私はそこに比べるとまだ被害の少ない地域で支援していたが、いつも泣いていた。
彼女はそんな私に、「そうじゃないでしょ」と何度も怒ってくれた。

当たり前だけど、人はそれぞれ違う。
違うからこそ、辛い時も倒れずに支え合える。ぶつかっても一緒によりよい方法を探すことだってできる。
意見を交わし、問題解決のために知恵を出し合うこと、シェアすること。
これまで向き合ってこなかったそれらの経験を通して、一人でできなかったことだってできるようになると知ったのだ。

現在所属している「デフ・パペットシアター・ひとみ」は、耳の聴こえない方々と聴こえる方々とが
協同で公演やワークショップを行うための組織だ。
そこでは企画・営業・広報など様々な役割を通して、役者さんに全力で演じてもらえるよう日々奮闘している。
次回新作のプロデューサーも任された。
そこでも「できないことをできるようにしたい」という思いを実現すべく、公演先の地域の方々とお話していく中で、お金がないとできない事案があるならクラウドファンディングをやってみよう、という風に実現に向け行動している。

意見の違い、障がいのあるなし、国籍の違い。
「違うから排除する」のではなく、「違うからおもしろい」と思えたら、そして一緒に楽しい時間を過ごせたら、社会はもっともっとよくなると信じている。

私には夢がある。
いろいろな違いがあっても、同じ時間に、一緒に楽しめる場所が“あたりまえ”な社会になること。
そして子どもたちが夢を持てるような社会を作ること。
子どもたちには、いっぱいいろんな経験をしてもらいたい。

石巻の避難所で出会った頃の子どもたちには、子どもの気配がなかった。
大人の雰囲気を敏感に感じ取り、はしゃぐことも楽しそうに遊ぶことも我慢して静かで、違和感を感じるくらいだった。
その子たちと一緒に遊ぶ時間を作り、まぶしい笑顔を見た時にはとてもうれしくなった。
子どもたちがのちのち思い返した時に、あぁ、あの時楽しかったなって、心に残るような活動をしていきたいと強く思った。

できないからしないのではなく、できることから始めてみる。
これからも前を向き夢に向かって、私らしく。

これが私の、KeyPage。

掲載日:2017年09月15日(金)

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公益財団法人現代人形劇センター内組織
デフ・パペットシアター・ひとみ 企画、制作

大里千尋(おおさと ちひろ)

心を開くことを恐れていた私が、3.11をキッカケに夢を見つけた。 世界一周をしたり、仕事をやめて被災地でボランティアをしたり。人の優しさ、人とぶつかる苦しさの中で知ったこととは……。

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