私は私立の幼稚園に通っていた。
父は建築関係で図面を書きながら現場監督をしていて、少しお嬢様気質な母はピアノの先生をしていた。
家はそれなりの中流家庭。
おんぼろの一軒家だったけど、畳の上に白いグランドピアノがあった。
母はそんな家庭環境に満足しているようだった。
父は建築系の仕事のため、飲んで仕事を取ってくることが多くなった。
まわりも職人気質の人が多く、飲み方が悪かったようで、軍歌を歌いながら帰って来た。
「おい!開けろー!」
本人はご機嫌な様子だが、大きな声をあげて帰って来ることも少なくなかった。
そして父は、「酒と借金」に溺れていった。
家計は立ち行かなくなり、私が小学生になった頃、母は働きに出るようになる。
これが、私の生き地獄の始まり。
お酒に逃げるように飲んだくれる父。
ストレスから自分をコントロール出来なくなり、壊れてゆく母。
その代償は家族に降りかかる。
自分のことで精一杯。
その上精神的に不安定な母は、私の寂しさや悲しみをフォローしてはくれなかった。
家にも学校にも、どこにも居場所がない。死ぬことよりも生きることの方が何倍も辛かった。
私の精神も、もう限界だった。
不安定な気持ちは、自然と私を非行に走らせた。
夜も帰らず、居場所を探してclubに行くようにもなった。
誰かに救ってほしくて、舌を噛み切って死のうとしたりした。
掲載日:2017年08月25日(金)
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西村直子(にしむら なおこ)
生活苦から母が働きに出た――それがすべての始まりだった。 精神的に安定しない母、死ぬことよりも生きることの方が苦しかった学生時代。そんな私の悲しいidentityは、とある少女との出会いで崩壊した。