三島桂太 Episode3:自分の体の声を聴いて。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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整体でバイトを始めた。体を治すために、とにかく金を貯めることにしたんだ。

稼いだ金を家賃に使ったら元の木阿弥だから、家は代々木公園のまま。
稼いだなかから食費なんかを除いて、月10万以上を治療費に使う。
整体なら、働きながら体のことも学べるはずだからね。

冬のホームレス生活なんか苦しいから、東京で姉ちゃんと同居している彼女に同棲をせがんだこともある。
「俺いま大変なんだからさ、俺を助けてくれよ」
「俺のこと愛してるんだったら、親に金借りるとかして助けろよ」

彼女はいつもキッパリしている。
「もちろん愛してるけど、それはけいちゃんのタメになんないから」
「何だよそれ。っざけんな! 」
「だってあなた、したい事があるんでしょ? 体治すんでしょ? 心の声が聞こえたんでしょ? 」
そう言われるとグウの音も出ない。確かに、そのとおりだし。

でもまあ、なかなかひどい事を言ってきた。よく愛想尽かされなかったもんだ。
「根拠はないけど、いつか私をしあわせにしてくれる人だと思う」
これが彼女の口癖。

そういうわけで、彼女には頼れない。段ボールとブルーシートのホームレス生活は安定的に継続。

家ないし、外寒いし、うつ治らないし、腹減ったし……。
また頭痛の出たその年の冬、耐えきれなくて頭や顔をあちこちに打ちつけた。
死ぬほど重い頭痛で死ねないなら、いっそ自分で……。

夜は明けた。生きたまま、次の朝を迎えちゃった。
体力を使い果たして放心状態の僕。白んでいく代々木公園の空。

「人間、簡単に死なないんだな。この国じゃ死ねないし、殺されることもない」

それは絶望であって……同時に、絶望の上に立つ希望みたいな感じでもあった。

たった一回の人生。
僕の人生、簡単には終わらないんだ。
僕の人生、僕が生きなきゃいけないんだ。
僕の体は、僕が治すしかないんだ。

治療にも金を掛けたし、整体で学んだ知識も取り入れて生活して、不治と言われた自殺頭痛は26歳の時に出なくなった。
ただ前後して、ナルコレプシーっていう過眠症の症状が出るように。
普通に生活していて急に寝落ちするんだ。まどろむっていうプロセスをすっ飛ばして、いきなり熟睡する病気。
あれこれ難儀な体だ。でも、諦めたって何も変わらないし。

整体や医療業界の常識もだんだんわかってきて。
基本的に対症療法。ひとつの症状に対してひとつの原因しか見ないし、アプローチしないんだ。
もしかして、ここが間違っているんじゃないかな。

仮にホームレスじゃなくても、いまの日本社会で生きていてひとつのストレスも受けないなんてコトあり得ない。
うつや頭痛、過眠症克服のためにストレスを減らすことも、もちろん大事だけど。
“ストレスに耐えられない体になっている“っていう歪みそのものを整えること。
これで、多少のストレス社会でも健康に生きられる心身が得られるんじゃないかな。

リフレクソロジー、足踏み、ストレッチ、アーユルヴェーダ、五行説、オイル、骨気、骨盤矯正……。
健康に関する思いつくかぎりの環境でバイトして学んできた。
そうして得た知識と僕自身の体の声、それに直感を頼りに、自分なりの理論を探り始めた。
ホームレスなりに食事を変えたり、全身の骨を動かすっていうことを日々してみたり、リンパを整えたり。

すると、次から次へと起きていた心身の不調が2ヶ月で完治。
「何だ、これ! なんかすごいの開発しちゃったな! 」

震災の3年後。長らく付き合ってきた彼女とようやく同棲しようかというころに、彼女の両親が自宅を新築した。
ちょうどいいタイミングなので挨拶に行き、同棲の許可をもらおうとした。

その家族がね、もう、あったかいのよ。“ザ・家族愛! ”って感じ。
こんなのおとぎ話の世界だと思っていたよ。
僕の人生には縁のないもの。息子の誕生日に父親がすき焼きぶちまける家庭だからね。

僕がどんな無茶苦茶を言ってもどっしり構えていられる彼女。その土台がわかった気がした。
こんなあったかい家庭で、無条件に愛されている自信や自尊心を育んできたから、彼女は動じないんだ。
人生に困難や想定外が起きても、彼氏がこんなんでも、自分の選んだものを信じてブレずに生きていける。

こうやって注がれてきた愛を、彼女は僕に注いでくれていたのかな。

「同棲するくらいなら入籍しなさい」
彼女のお父さんの言葉で、同棲の予定は結婚に変更。

まだまだ課題の多い人生だけど。
ずっと傍にいてくれた女性と正式に家族になって、27歳の僕は人生の新たなステージに踏み出したんだ。

掲載日:2018年11月15日(木)

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根本改善美容士、株式会社 HPP 代表取締役社長

三島桂太(みしま けいた)

自身のクリニックで“ゴールの伝えられる施術”をおこなう三島桂太さん。“エキセントリック”という言葉では表せないほど波瀾万丈な生い立ちの三島さんが、自身の怒りに気づき、生き方を覆したキッカケとは......?

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