そのうち、無意識に「いい子でいなきゃ」「頑張って早くできるようにならなきゃ」「気配りできるようにならなきゃ」と、自分で自分を縛るようになった。
と同時に、褒めてもらえる、「勉強ができる」という部分を伸ばそう、とも思うようになった。
受験勉強を必死に頑張って、都内の有名大学に進学した。
大学でも、いい成績が取れるように授業や課題に一生懸命取り組んだ。
大学までは片道2時間半かかったけれど、落とした単位は1個もなかったし、成績も、AやBを取ってきた。
…と、こんな感じで。
私は「優等生でありたい」という想いを支えにして、必死になって生きてきた。
けれどそれは同時に、周りに敵を作って、どこか見下して、そして何より自分の心をいつも傷つけるということだった。
そのことに、ずっと気づかなかった。
2015年、社会人4年目の夏に、キャリアアップを目指して転職した。
それまでは成田空港で航空貨物の輸入手配の仕事をしていたけれど、就活生の時に目指していた商社業界に飛び込むことになった。
小学校5年生から英会話スクールに通って、大学で英文学を専攻していた私の夢は、英語を活かして、バシッとスーツを着て、アメリカに海外出張して日本とアメリカの懸け橋になるという、バリバリのキャリアウーマンになることだった。
新しい職場での私は、まさにその通りになった。
デジタルパーマをかけたミディアムの黒髪に、スーツカンパニーで買ったグレーのスーツと、黒カバンを身に着け、オリエンタルトラフィックのヒール靴を履いて、お客さんのところへ営業に行った。
週に1回はアメリカとの電話会議。
ゆくゆくは、アメリカ西海岸に出張するチャンスがあった。
どんどんと輝いていく私。とてもわくわくしていた。
けれど、自己承認欲求を満たせば満たすほど、同棲していた彼氏との関係が、なんとなくギスギスしていくように感じた。
私は、彼との結婚を考えて、職場が都内で、お給料も高い会社に転職したのに。
それなのに、どうして。
掲載日:2016年10月10日(月)
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