琴羽夏海 Episode2:人は、いつか死ぬ。それは突然やってくる。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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「今日も世話になるねえ。あなたの笑顔を見ると元気になるねぇ」

私の顔を覚えてくれたおじいちゃんやおばあちゃんは、病院でにこにこと私に話し掛けてくれる。
眼科の検査員として就職し、必要とされる喜びを感じながら働いていた。

一度高校を中退し、定時制高校を出て、デザインの専門学校を出て、就職をして、……でも長続きしなくて。
接客が好きで人の役に立ちたいというおもいで、紆余曲折を経て医療業界に入った。

好きな仕事だとは思っていた。
ただ、検査や患者さんとのやり取りがどんなに楽しくてやりがいがあっても、最終的な決定権はドクターにある。
もっと自分の力で人の役に立ちたいというおもいが漠然と目覚め始めていた。

たまに、別の病院からヘルプのスタッフの来られることがあった。
そのなかのひとりに、親しみやすくにこやかで親身に話を聴いてくれる男性がいた。
自信にあふれ、心からこの仕事を愛し、それに夢中で取り組むそのお兄さんの仕事ぶり。
それはもちろんステキだった。けれども、その対比としての自分の姿が際立って感じられた。

「この人にとってのこの仕事のように、私にとって一生夢中で取り組める仕事って、何だろう」

面倒見の好いお兄さんだったので、そんな胸のうちも彼にだけは話していた。
悩みを彼に話しながら、私には、
自分ひとりでは見えなかった自分自身の心の葛藤や望みの輪郭が少しずつ見えてくるようになった。

人は、自分ひとりで自分を知るように出来てはいない。
自分とは異なる他人を見て自分の得手不得手や現在地を知ったり、
他人に心のうちを話してみることで心の望みを知ったりするのかもしれない。

この人と話していると、私にも自分のことがもっともっとわかる気がした。

私に私のかけらを見せてくれたそのお兄さんは、ある日突然亡くなった。
部屋で倒れているのが見つかったのだ。私の人生に救いを見出した矢先に起きた突然の出来事だった。
ショックを隠せなかった。私は最後に「お疲れ様」も言えなかったのだ。

人は、いつか必ず死ぬ。それがいつかはわからない。
うんと先かもしれない。今日明日かもしれない。それはわからないのだ。

「好きな事がしたい」と悩んでいられる時間。そして、好きな事をする時間。
それは、長くはないのかもしれない。
ショックから時間を掛けて立ち直りながら、
私は、好きな事をして生きるということを真剣に考え始めていた。

掲載日:2018年12月03日(月)

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ポジティブ・リーダー占い師

琴羽夏海(ことは なつみ)

自信を持つための占い、いまここから幸せに生きる占い。そんな占いを提供する琴羽夏海さんは昔、自信が持てず何事も長続きしないことを苦にしていたのでした。琴羽さんが現在のような活動を始めたきっかけとは?

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