石神敬吾 Episode4:「お手紙」の可能性を信じて。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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父さんが脳梗塞で倒れたのをきっかけに、30歳の僕は静岡の実家に戻った。
実家の近くで友人と飲んでいると、居合わせたおじさんと意気投合。県内では有名な企業の社長さんだという。
「志太ビジネスプラングランプリってのが今度あって、俺がファシリテーターをするんだが。
 第1回だぞ。君、出てみないか?え?出る?みんな!優勝候補だ!!」

もともとあたためていた【お手紙屋さん】ビジネスと、ほかにも2つのビジネスアイディアを引っ提げて、僕はエントリー。
そして、その『お手紙相談サービス「ハートレター」』で第1回の大賞を受賞した。

それからは行政のバックアップを受け、
いろんな催しにブースを出させてもらったり、こちらから売り込みに行かなくても取材を受けたりするようになった。

お悩みを持つ人に届くように。
ビルの屋上に立つ前に【お手紙屋さん】を利用するという選択肢を、必要な人に知ってもらうために。
いろんな場所に足を運んだ。

母さんが一度たたんだ焼き鳥屋「石神鶏肉店」を再開したり地元の仲間と事業をしたりしながら、
こうして僕は【お手紙屋さん】を始めたのだった。
知り合いのおじいちゃんおばあちゃんや、焼き鳥屋の常連さんやご近所さんに紹介されたおじいちゃんおばあちゃんに、
寄せられたお悩みのお返事を書く役をお願いして。
レイナちゃんのお手紙の経験が大きかったので、もちろん手紙はすべて手書き。
利用料の半額は彼らへの報酬、経費を差し引いた残りが【お手紙屋さん】の利益になる仕組みだ。

手紙のすばらしさと可能性を教えてくれたレイナちゃん。
最後の優しさをくれた名前も知らない女の子。

自己満足だけど、ふたりのおもいを背負って僕はこの事業を続けている。

二十歳の時に将来の青写真を描いたのは、ただ『僕がこうしたい』というおもいひとつだった。
いまは、誰かが、社会が必要としてくれるものを届けたいと思うように変化している。
ビジネスとは、社会に合わせてするものなんだ。

【お手紙屋さん】にアクセスしてくれた人は、もう僕の人生の一部だ。
目の前の人をしあわせにすること、それを続ければ、僕の周りにはしあわせな人が増える。
もしかすると、【お手紙屋さん】を利用して気持ちが楽になったり傷が癒えたりしたその人たちも、
今度は周りの人をしあわせにしようと生き始めるかもしれない。

しあわせな人に囲まれていれば、自分ひとり不幸でいることのほうが難しいだろう。
目の前の人を片っ端からしあわせにすることが、自分をしあわせにする一番の近道なんじゃないか。
東京にいたころより人と深くつながれる実感のあるいま、改めてそんな事を思う。

お金の価値がどんどん下がっている現代、唯一無二の「お手紙」に価値を見出す人、救われる人も少なくないと思う。
やりたい事業や収益の上げやすい事業はほかにもあるけれど、
この先ほかに何を手掛けてもこの【お手紙屋さん】サービスは続け、もっともっと広げてゆく。
メールが普及しようがLINEが流行ろうが、手紙という文化が消えてなくなることはない。
その価値に気づき直してくれる人が増えてくれたらうれしいし、必要な人には【お手紙屋さん】を気軽に利用していただきたい。

人ひとりの人生を変える、救うことさえできるかもしれない「お手紙」の可能性を信じて。
これが、僕の掴んだKeyPageです。

掲載日:2018年02月09日(金)

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お手紙屋さん

石神敬吾(いしがみ けいご)

相談者のお悩みに心のこもった手書きのお手紙を送るサービス【お手紙屋さん】を運営する石神敬吾さん。異色のサービス開業のきっかけは、28歳の時に遭遇した痛ましい出来事でした……。

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