石神敬吾 Episode2:唯一無二のあたたかさ。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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その会社で仲良くなった女性社員のひとりが結婚をし、かわいい女の子を出産した。名前はレイナちゃん。
『子どもって、こんなにすぐに大きくなるんだな……』
よく遊びに行っていたので、レイナちゃんの成長も間近で見せてもらった。気づけば僕も27歳になっていた。

転職すると決めていた28歳を間近に控えていた。いまの会社でリーダー経験はしっかり積ませてもらった。
厳しい環境で成果を出せば自信がつくんじゃないか。
そう考え、転職サイトに常に求人を出している会社……人の出入りの激しそうな会社に絞って調べていた。

レイナちゃんの5歳の誕生日に僕は絵本を贈った。
『もうすぐ僕はいなくなる。いつまでも僕のことを忘れないでほしいな……』
そう思って渡した『たいせつなこと』という絵本。レイナちゃんはうれしそうに受け取ってくれた。

その2週後、いよいよ東京に引っ越すほんの数日前、レイナちゃんにお別れの挨拶に行った。
帰り際、玄関を出ようとする僕に、後ろ手に何かを隠したレイナちゃんが近づいてきた。
『何だろう?』
首をかしげる僕に、

「けいご、ありがとう」

と、彼女は封筒を差し出すのだ。長い付き合いだ、呼び捨てなのはもはや気にならない。

僕はニヤニヤしながら帰宅した。人が見たら何事かと思う顔だったかもしれない。
『何が書いてあるんだろう?』
5歳の女の子が心を込めて書いてくれたお手紙。
逸る心を抑え、机に向かい、封筒を破らないよう丁寧に開けると……

「とおくにひっこしてもわすれないでね」

手書きのメッセージと僕の似顔絵が、そこに。

ドカンと胸に来た。
説明できないようなうれしさがあった。

言葉や論理的に説明できるものは、簡単に共有できる。
けれども、手書きの手紙の良さというのは説明が難しい。心への入り方が違う。そう思った。
きっと、誰にとってもそうだと思う。
何より、いくらお金を払っても同じものは手に入らない。世界にひとつなのだ。

こんなに想いの伝わるものをもらったのはいつぶりだろう?
その手紙には、レイナちゃんの想いがめいっぱい詰まっていた。
それがあふれにあふれ、僕の胸をいっぱいにしてくれた。

『お手紙って、なんてイイものなんだ……』
手紙というものにほとんど縁のない人生だった僕の胸に、そんなおもいが生まれた。

その手紙を携え、僕は新天地東京に旅立ったのだった。

掲載日:2018年02月09日(金)

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石神敬吾(いしがみ けいご)

相談者のお悩みに心のこもった手書きのお手紙を送るサービス【お手紙屋さん】を運営する石神敬吾さん。異色のサービス開業のきっかけは、28歳の時に遭遇した痛ましい出来事でした……。

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