一柳雄太 Episode4:これが僕の輝き | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

» 一柳雄太 Episode4:これが僕の輝き

どうにも耐えられなくなって、会社を辞めた。
東京に戻って飲食店のアルバイトをしたり、契約社員として電話営業の会社に入ったりした。
営業は嫌いだけど、ほかにできる事はないから。

もう一度会社員になるということさえ避けられれば、と思う。
業務内容も“仲間”の範囲も決められて、そのなかで馬車馬のように働くのに、収入の上限は変わらない。
僕にとって会社員とはそういうものでしかない。それが怖すぎる。もう一度できるとはとうてい思えない。
たとえ仕事内容は同じでも、契約社員として時間単位で給料を受け取るほうが精神的に楽だった。

とはいえ、結婚するための収入を上げたくて退職した面もあったので、いつまでもこのままでとは思わなかった。
いつか自分でもビジネスをやりたい――学生時代に抱いた気持ちも、忘れたわけじゃない。

名古屋にいたころより東京に戻ってからのほうが、同世代の仲間の話が入ってくる。
キラキラ輝いているらしい彼らと、新卒2年目で辞めた僕。
恥ずかしすぎて、懐かしい仲間たちに会える気がしなかった。
とはいえ、友達がいなくて平気なわけでもない。

名古屋での経験を思い出して、SNSで友達作りのコミュニティを探してみた。
名古屋以上に、東京には選択肢がある。
「普通の居酒屋で……参加費は男8千円?? 」
友達作りにせよ何にせよ、結構な参加費を取るイベントがあるものだった。

お金もないなりに、いくつか参加してみた。はっきり言って、普通の居酒屋の飲み会。
主催者も人を集めて店を予約しただけ、仲良くなるのは参加者同士でどうぞ、という感じだ。
「8千円取ってこんなもんなのか……」

とはいえ、せっかく参加したイベントだから。人脈も増えたら、将来のビジネスのヒントになるかもしれない。
たまたま同席した経営者さんに、相談してみた。
「自分でビジネスしたいんですが、何をしたらいいのかわからないんです」
「うーん。一柳くん、何が得意なの? 」
「得意……幹事とか、何かを仕切ったりとかは、昔からやってました」
「じゃあ、幹事が仕事になるんじゃない? 」

ピンと来なかった。幹事が仕事? どういうことなんだろう?

何度か交流会に参加して、「僕がやったほうが絶対にいい会になる」と思った。
幹事が仕事になるとは思えなかったけど、これよりは良い交流会ができるんじゃないか。
みんなが参加しやすい金額で主催して、手間賃として自分の飲み代くらいペイできたらラッキーだし。
それで人脈が増えるなら、入ってくる情報も増えて、将来のビジネスの役にも立ちそう。

友達づくりや交流を目的としたコミュニティをSNSで作って、3ヶ月掛けて飲み会を企画、参加者を募った。
来てくれたのは40人! 初めての主催でミスもかなり多かった。だけど、


「幹事さん、良かったよ。ありがとう」
「あっちこっちのテーブル回って、ご苦労さま。たいていの交流会は参加者任せだけど、今日のはホント楽しかったよ」

たくさんの感謝やねぎらいの言葉が掛けられた。
しかも、参加者のほとんどが二次会に流れるという予想外の展開に。

ああ、こうやって、喜んでもらうことで企画ゴトは成り立つんだ。
利益が出たわけじゃない。でも、感謝とお金の回る仕組みガストンと腑に落ちた。
そう、大学時代に貸衣装屋さんの集客を請け負ってお金を頂いたあの時の感覚……。

3ヶ月掛けて開催した初回。次は翌月にやってみよう。次は月2回やってみよう。次は週1回……。
ただの交流会からコンセプトを決めたり、会場をオシャレなカフェにして企画したり。
月に1度、100人規模のイベントもするようになった。

でも、どんな会でも僕のスタンスは変わらない。
「一柳雄太の会に来たんだから、楽しかったとかタメになったとかって思ってもらいたい」
参加者一人ひとりに声を掛けるし、気の合いそうな人同士を引き合わせることもある。
おかげさまでリピーターも多数、気づけば年100回のイベント開催、4000人の集客をした年もあった。

将来のビジネスのためにと思って始めたイベント企画が、そのまま僕のビジネスになっていた。

キラキラしたヒーローみたいな人、スポーツや音楽の得意なスターみたいな人と違って、企画の幹事しかできない。
ずっと、自分のことをそう思っていた。
その、人をまとめ楽しませることが、僕にできる一番の社会貢献、これこそが僕の輝きだったんだ。
輝き方や場が人それぞれ違うだけで、たとえ前面に出なくても、誰にでもキラキラできる分野があるんだ。

いつの間にか、僕のイベントで知り合って結婚したカップルが、知っているだけで50組! 実際にはもっと多いと思う。
誰かの人生に影響を与え、誰かが自伝を書いた時に自分が登場するような仕事を――そんな夢も、気づいた時には叶っていた。


こうして、関わってくれる人の年齢や生活も変化している。
家族が増えても関わっていけるコミュニティを――いまは、イベント企画に加えてシェアハウス運営のほうにも力を入れている。

友達よりは深いけど、家族というにはちょっと恥ずかしい、ふとした時にお互いに助けたりヒントを与えたりする、信頼し合える関係性。
社会人になりたての若者は、年長の誰かにアドバイスをもらうかもしれない。
30代くらいの人は、フレッシュな若者を見て刺激をもらうかもしれない。
そんな、いい影響を与え合いながら共生できるコミュニティを、僕の周りに広く築いていきたい。

たった一度、人生の選択を間違えたと思った。もうやり直せないんだと絶望した。
でも、そんなことはなかった。
人生はどこからでも、どうとでも切り拓いていける。
自分では当たり前で何でもないと思っていた特技が、人に喜びや価値を与える道具になる。
誰だってヒーローになれるんだ。

いまとなっては、「間違えた選択」と思った会社員時代も、僕の宝になっている。


自分を信じて、当たり前だと思っている特技に改めて光を当ててみてほしい。
キラキラしたものは、ヒーローになれる何かは、誰の胸にも眠っているから。

こんな僕のKeyPageから、あなたがヒントをつかんでくれたらうれしいな。

掲載日:2019年03月29日(金)

このエピソードがいいと思ったら...

この記事をお気に入りに登録

株式会社シルワ代表取締役

一柳雄太(いちやなぎ ゆうた)

幼少期から仕切り役を担ってきた一柳雄太さんですが、「自分には特別得意な事がない」という気持ちもあったとか。社会に出て挫折も経験した一柳さんが、かけがえのない自身の才能に気づくまでを追いました。

エピソード特集