一柳雄太 Episode1:ヒーローになれない自分 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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「何か連絡のある人はいますか? 」
ホームルームの終わりに先生がそう言うと、僕は勢いよく手を挙げる。
「今日はひまじんクラブをやるので、遊べる人は○○公園に集合ね! 」

班長をやったり、放課後の遊びを仕切ったり。物ごころついてからずっとそういうふうに生きてきた。
公園ではドッヂボールやサッカー、神社ではケイドロ。やりたい事は毎日たくさんある。
「雄太、次は何やる? 」「今日はどうする? 」
その時間はみんなの中心にいることができる。その雰囲気が好きだった。

ヒーローみたいにキラキラした特別な人っているもので。

いっぽうで、遊びを仕切るしかできない僕。スポーツができるとか歌が上手とか楽器ができるとかじゃない。
勉強はできるから、ドリルが早く終わったら「周りの子に教えてあげて」なんて先生に言われる。
「班長とかもいつもやってくれるし。雄太くんはしっかりした子ね」

キラキラしたヒーローにはなれないから、勉強とか班長とかで大人の期待に応えたかった。

中学に上がっても、班長とか学級委員とかを率先してやる。成績も相変わらず良くて。
そんななか、期間限定で順番に回ってくるいじめみたいなのがあった。
そういうのを変えることはできなくて。自分の意志じゃないのに“仲間”の範囲が変わってしまうのが嫌だ……。

生徒会長に立候補しようとした時。
「会長には去年の生徒会経験者が立候補するから、一柳は副会長に立候補してくれないか」と先生に言われた。
すると、副会長の選挙でスポーツもできてイケメンの後輩との一騎打ちに。結果は敗北。
「僅差だったんだからしょうがないよ」
周りにはそう言われたけど、かなりショッキングだった。

学園ドラマの主人公みたいな、キラキラした後輩に負けた。
人をまとめるという、自分の得意なフィールドでさえ、負けるのか。
キラキラした特別な奴らには、得意分野でさえ勝てないのか……。

主役にはなれなくても、みんなに慕われていると思っていた。
でも、実はそんなに好かれてもいなかったのかな。嫌だ。ダサい。情けない。

「どんな顔して学校行ったらいいんだろう……」

推薦入試で進んだ高校。
一般入試で入ってきた子たちに最初のテストで太刀打ちできず、最下位クラスになってしまった。
勉強には自信があったのに。ダサい。情けない。恥ずかしい……。

悔しすぎて、めちゃくちゃ勉強した。放課後の補習にも毎日出た。
学期ごとの試験のたびに順位を上げ、成績順のクラスをひとつずつ上げ、高2の夏には最上位クラスに。

中学の時には選挙で負けてそのままだったけど。
奮起して努力したら、ちゃんと結果を残すことができた。

勉強ばかりの高校で、クラブ活動とか生徒会とかいう思い出はゼロ。
入りたい大学があったから猛勉強したんだけど、正直、そこに合格できているイメージは持てなくて。
結果、志望大学には受からず別の大学に進学。

受験が「終わった」という達成感はあった。一方でモヤモヤした気持ちも残った。
本気でやったつもりだったけど、本気だったのかな。もっとできる事があったんじゃないかな。
いろんなものを犠牲にして、できる限りの事をやったつもり……だったけど。

掲載日:2019年03月28日(木)

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株式会社シルワ代表取締役

一柳雄太(いちやなぎ ゆうた)

幼少期から仕切り役を担ってきた一柳雄太さんですが、「自分には特別得意な事がない」という気持ちもあったとか。社会に出て挫折も経験した一柳さんが、かけがえのない自身の才能に気づくまでを追いました。

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