五島希里 Episode2:信じて挑戦すること。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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相変わらず、なりたいものは見つからない。
子ども、教育、国際協力。この3つのキーワードはとうに定まったものの、仕事としてしっくり来るものが見つからないのだ。

何か始めることを誰かに反対されたことはない。その代わり「始めたら最後までがんばりなさい」と母には言われていた。
目の前の事、やってみたいと思った事に、片っ端から挑戦してゆく。
英語の勉強、英語スピーチコンテスト出場、委員会の委員長、プロをめざす役者の集まる劇団での舞台出演……。
役割を果たしたり何かを達成したりするための努力に少しも苦はなくて、ワクワクした。
全部で10回出場したスピーチコンテストの1回目だけは、直前に不安で怖くなってしまって。
けれども母がリハーサルに付き合ってくれて、「案外だいじょうぶだ!」と思い直すことができた。
話したり書き出したりして明確化すると不安の大部分は消えてゆくと知った。

一方、周囲との温度差も少なからず感じていた。
「一生懸命になるほどはやりたくない」「やりたいけど失敗したら格好悪い」
そんな相手には、「なんでやってみないんだろう?」という気持ちも持っていた。
「自分の力で挑戦してみれば、もちろん失敗するかもしれないけど、できるかもしれないのに。どうして挑戦しないのかな」
不安と向き合うことの大切さを知りつつある私は、そんなもどかしさを感じていた。

もっと世界のことが知りたくて、国際経済のコースのある高校に進学。同時に、近所のマクドナルドでアルバイトを始めた。
「いらっしゃいませ! 」の一言が初めのうちは恥ずかしくて、モップ掛けのほうが気楽だったくらい。

けれども、ある時店長が私の子ども好きに気づき、「今度フロアに出てみる?」と勧めてくれた。
フロアサービスの教材ビデオを見て勉強を始めた。画面の向こうのお姉さんたちのイキイキと働く姿に惚れ惚れした。
「私も、こんな人になってみたい!」

全国のスタッフが接客や調理などのさまざまな部門別で店舗で競い合う大会があるという。
その大会のフロアサービス部門で優勝する、という目標を持った。
ずっと、なりたいものの見つからなかった私。なりたい自分になれるかもしれない、と初めて思えた。

店舗戦があって、地区戦があって、どんどん勝ち上がって……そのうんと先にある日本一。
店舗に置いてある教材を片っ端から読み、日々のアルバイトでひとつずつ取り入れてみる。
アルバイトするのと同じくらいの時間を掛けて、接客スキルを上げるための勉強をした。

そして、高校3年生の時……2回戦で敗退した。
号泣しながら審査員に食らいついた。「どこがダメだったんですか!? 私、もっと良くなりたいんです!」
具体的なフィードバックがほしかったのに、言われたのは「まあ、サービスって好みもあるからね」

万人受けしたいとは思わないけれど、できるだけ多くのお客様に好かれるようにサービスできるのが良いサービスなのだろう。
欲しかった言葉がもらえなかったことで、かえって火がついた。
サービスが良いと聞いたレストランに、自分でお金を出してサービスを受けに行く。空港やホテルにも通った。
アルバイトのお給料から、安くないお金を出して受け取るサービス。そこから学ぶものは、あまりにもたくさんあって。
気づいた事や学んだ事はすべてノートに取り、アルバイトに活かす。
日々のアルバイトでの成功体験や失敗体験もすべて記録し、「次はこうしてみよう」「これを取り入れてみよう」とPDCAサイクルを回す。

大学に進学してからは、勉強や研究にレポート執筆、ユニセフのインターンシップにも応募して合格、
とにかく忙しかったけれど、アルバイトで日本一になる目標は揺るがなかった。

考えつく限りの努力をして迎えた大学1年次の大会で、とうとうその目標を達成。

挨拶もできなかった私が、あの時憧れた自分になれた……!!! 泣いて、喜びを噛み締めた。
思いつく限りの努力をすれば、これだけの成果が出せるのだ。
この世にできない事なんかないと言うと、言いすぎかもしれないけれど。それでも、自分を信じて挑戦することは自分を裏切らないのだと知った。

ここから、私の次の挑戦が始まる。

掲載日:2018年08月23日(木)

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港屋株式会社 代表取締役、一般財団法人生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ

五島希里(ごとう きさと)

コーチとして、中高生を対象に“問いを立て、目標に向かう道のりをデザインする力”を育む活動をしている、五島希里さん。五島さんの人生を貫いているのは、9歳の時にある写真を見て抱いた衝撃でした。

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