江連亮 Episode3:夢がますますくっきりと | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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ライセンスブランドを扱うアパレル会社への就職を決め、それを期にひとり暮らしを始めた。
お父さんがこういう状況で寝るに寝られないまま、うとうとしながら会社勤めするわけにはいかない。
「お前の人生だから、やりたいようにやりなさい」
そう言ってくれるお母さんたちを同じ家で守れなくなることに後ろ髪引かれながら……おれは家を飛び出した。

専門学校は宣言どおり皆勤賞で卒業。皆勤の賞状を高校時代の彼に見せた。
学内で誰もやったことのないという事を、あの壮絶な家庭環境でやり遂げた自信。
これがあれば、社会に出ても何だって乗り越えられる。

早く経験を積んで成長したいので、あえて厳しい店舗に配属してもらった。
あまりお金を持たない若年層の来店の多い店舗に。奇しくも、専門学校のあった新宿勤務だ。

体育会系の会社なので、やり方にいろいろ思うところはあったけど。
「まずは結果出してからだ」と切り替え、先輩の接客を観察して盗みまくり、少しずつ成績を上げていった。


店舗の先輩や上司との相性も、だんだんわかってくる。
そのなかに、どうにも性格の合わない上司がひとり。
「なんでこんな言い方するかなあ? 同じ事言うにも、もっと言い方ってあるだろうに……」
何事もオブラートに包まずズケズケ言ってくるSさん。仕事に対する厳しさゆえだとはわかるけど。
世の中広いといっても、「こんなに合わない人っているんだ」と驚くぐらいの合わなさだ。

おれのほうも、疑問に思った事や理不尽な事は、上司でも何でも言ってしまう性格。
成績を上げるようになると、Sさんとぶつかることも増えてきた。周りがヒヤヒヤするくらいだ。

ある日、勤務を終えて渋谷駅で乗り換えの電車を待っていた。
おれのアパートの最寄駅には各駅停車しか停まらないので、やってきた急行に乗り込む人たちを見ていると。

「……あ」

乗り込んだ男性が何か落とした。それも、線路に落としてしまった。
どうやら男性も気づいた様子。だけど、降りて駅員を探そうとせず、電車に乗ったまま。少し酔っているのかな。

線路を覗き込むと、落としたのは携帯電話。思いきって声を掛けた。

「あの、いま携帯電話落とされましたよね。駅員さん呼んだほうがいいんじゃないでしょうか? 」
「ああ、だいじょうぶだよ。明日も渋谷駅来るから」
そういう問題なのか……? 余裕があるというか、なんというか。

終電なのかと尋ねると、そういうわけではないという。
「だったら駅員さん呼んだほうがいいですよ。とりあえず降りてください。僕、呼んでくるんで」


駅員を呼んで携帯電話を回収して、ひと息ついて。
「見ず知らずの俺に……イイ奴だな。仕事は何してるんだ? 」
勤めているブランドの名前を言うと、なんと彼も愛用しているという。

意気投合し、後日銭湯に行ったり、寿司をご馳走になったりした。
仲間と成功させていた会社を手放し、いまはひとりでITの会社を立ち上げたところだという。
収益化もこれから、というところだそうなのに、一介のサラリーマンであるおれにすごく良くしてくれた。

「お前も会社やりたいのか。絶対やったほうがいい。お前と同世代のおもしろい奴ら紹介してやるよ」
と彼は言い、おれの2、3上くらいの人たちとの飲み会をセッティングしてくれた。
その人たちはちょうど大学を出る年。内定先も国内外の名だたる企業だ。

そうして知り合った同世代の彼らともSNSでつながり、彼らの活躍に刺激を得ていった。

それ以前に専門時代のIがきっかけで海外に興味を持っていたので、有給休暇を使って海外旅行をすることも。
特にニューヨークがすごい。街のエネルギー、場所のエネルギーというものをビリビリ感じた。
こんな場所で生活したり働いたりするのと、エネルギーの低い場所で生きるのと。数年後の現実の差はどれほどになるだろう。

だからといって、いますぐニューヨークで暮らせるわけじゃない。
いまいるここで、この会社で、めいっぱい成長しよう。
そして、いつかは会社を立ち上げて、昔の自分みたいな人たちの希望になるんだ。

掲載日:2019年04月05日(金)

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株式会社Fibonacci 代表取締役

江連亮(えづれ りょう)

株式会社Fibonacciを経営する江連亮さん。家庭内暴力という生きるか死ぬかの日々をくぐり抜け通った専門学校で、「こんな自分だからこそ誰かの希望になれるかもしれない」という希望を見つけ……その半生を追いました。

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