もうすぐにんげんとして生まれる。何をするんだろう。どんなふうに生きるんだろう。
楽しみで楽しみで、ぼくのおとうさんとおかあさんになる人のことをぼくはのぞいてみました。
おとうさんのおとうさんは、くるまというものを売るかいしゃをけいえいしていたそうです。
そのおしごとを自分がつづけようと、おとうさんははたらいているかいしゃをやめようとしました。
おとうさんの表情はかがやいていました。きっと、やりたい事だったんですね。
そんなおとうさんを見守るおかあさんもニコニコしていて、ぼくはこのステキな人たちの子どもにはやくなりたいと思いました。
ぼくはおかあさんのおなかのなかに入りました。
へそのおから外をのぞくと、おとうさんは、おかあさんにはなしをしていました。
かいしゃをやめるのはやめる。この子のために、おれはていねんまでこのかいしゃではたらく。おとうさんはそう言いました。
この子というのは、ぼくのことでした。
ぼくが生まれるとわかって、おとうさんは亡くなったおとうさんのかいしゃをつづけることをやめることにしたのです。
おとうさんの顔ははればれとしていました。いろいろなおもいを飲み込んで、この道で生きると決めた、それはつよいつよいおとこの顔でした。
物心ついたころから、僕は泳いでいた。
10歳の時にジュニアオリンピックに出場、その後タイムが伸び悩んだり、中2のころにまた急に伸びて全国大会に出たり。
もともと一人っ子で協調性がなかったが、個人競技である水泳に没頭したことでそれが悪化したのだろう、
異性の存在が気になるようになった中学時代の僕に甘酸っぱい想い出はほとんどなかった。
水泳の成績もやっと伸びてきたので、このまま上に行きたいと思った。
スポーツ推薦で男子校に進学。その水泳部で僕はある男に出会った。
一言で言えば、チャラ男だ。水泳はイマイチなのに、女にはめっぽう強い。
男子校だぞ?いったいどこでそんなに女の子との接点を作るんだ?
中学時代もそんなふうだった、進学したところで状況の変わらない僕は悔しくなり、その男に何から何まで教わることにした。
流行りのソーシャルゲームで女の子と知り合う方法。
他校の文化祭にナンパに行ったり男子校である自分の高校に遊びに来る女の子を捕まえたりするという出逢い方。
そいつに教わったとおりにすると、じきに、部活を終えてケータイを開くと15,6通のメールが女の子から来ているような状態が普通になった。
部活が20時まであり翌日が朝練でも、必ず部活帰りに池袋で女の子と過ごす、そういう生活だった。
複数の女の子と接触するので、おのずと器用に立ち回れるようになった。
誰とどの話をしたかも正確に記憶する。名前の呼び間違いなど言語道断だ。
そいつがいなければ水泳三昧だっただろう僕の高校生活は、良い意味ですっかり裏切られた。
水泳にはもちろんのめり込み、高2の時にはインターハイで3位に。並行して、女の子たちとも楽しく過ごす。
水泳しかできなかった中学時代の僕とは雲泥の差だった。
だが、そんな日々が永遠には続かなかった。インハイで3位を勝ち取った僕は、再びスランプに襲われたのだった。
掲載日:2017年10月13日(金)
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安彦大地(あびこ だいち)
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