大学4年になり野球部も引退、就活もしたけれど、本当にやりたいことは何かという問いには
まだはっきりした答えが見えていませんでした。
とにかくがむしゃらに、自分から積極的に動きました。
SNSで学生起業家の集まりに参加し刺激を受けたり様々な事を学んだり、
作った名刺を授業の講演に来ている企業の経営者の方に勢いで渡したり。
時には相手にしてもらえないこともありましたが、とてもよい経験になりました。
ある日のこと。ふとした事から参加した別の学部の講演会で、
障害者雇用に関するある事実を知りました。
彼らの平均月収が15,000円以下であること。
日本における障害者の法定雇用率が半分以下であること。
後者に関しては例えば、現在50人以上の一般の民間企業では全従業員のうち2%は
障害者の方を雇うことに法律上決まっているのですが、
それを達成している企業は半分以下だということです。
「月15,000円!? そんな……そんな事って……!?」
あまりにも衝撃的な事実。
障害者のいる家庭を見て昔抱いた「親が死んだらどうするんだ? 」という疑問も、再び頭をよぎりました。
具体的な数字を伴ったその衝撃は、僕を行動に駆り立てるに十分でした。
正直な話、それまで福祉分野には全然興味がなかったのですが、
そこから少しずつ勉強をしたり障害者の方と触れ合える場に足を運んだりしました。
昔は障害者の方に対して「なんだか怖いな……」と偏見を抱いていたところもありましたが、
実際に接し、楽しい時間を持つ機会が増えるにつれ
「僕がリアルな彼らを知らないだけだったんだ」と腑に落ちてゆきました。
大切なのは関わるキッカケと、高いアンテナを張ることなのだと知りました。
また、ある時。
ずっと野球を続けてきたので、一時期地元でよく通っていたバッティングセンターがありました。
そのバッティングセンターの近所にある会社が、
多くの障害者の方を雇用しており、安定した高品質のチョークで業界一位のシェアを占めている会社だった、
と知りました。
『日本でいちばん大切にしたい会社』という本にも取り上げられているのです。
そんな会社が近所にあったのに、僕は福祉分野に興味を持つまでその存在すら知らなかった。
本人が福祉や障害者支援に関心を持たない限り、
そんな誇るべき企業があるのに近所の住人にすらその存在も意義も知られないなんて。
自分自身が障害者のリアルを知ろうとすることのほかに、
「障害者雇用や福祉について一般の人の知るキッカケを増やす」ことの必要性を感じました。
その企業のことを取り上げた本の著者が僕の大学の大学院教授だったこと、さらにその会社が地元にあったことも
自分の思いを後押しするような縁だと感じられました。
彼らの雇用のあまりにも厳しい現実を知ったのを境に、僕の人生観はガラリと変わりました。
なんとか現状を変えたい。
彼らが社会と関わりながら自立できるシステムを作りたい。
これこそが僕のやりたいことなんじゃないか。
人生のひとつひとつの点が線になったようでした。
掲載日:2017年11月10日(金)
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株式会社Nextwel(ネクストウェル)代表
ポータルサイト「Welsearch」編集長
日野信輔(ひの しんすけ)
友人の死をキッカケに、限りある人生を思い切り生きると決めた。 野球一筋の生活を終え、思いがけず知った障害者雇用のあまりに厳しい現実。 自立支援を実現させる夢を追い続けて。