尾熊英一 Episode1:フツーの大人になるつもりだったけれど……。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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フツーの大人になるつもりだった。

特別取り柄があるわけでもない、情熱のある科目や趣味があったわけでもない。
担任の先生には「死んだ魚のような目をしている」なんて心配されたこともあった。けれども、自分としては何の問題意識も持っていなかった。友達はたくさんいる。両親ともに教員の我が家は裕福なほうでもあった。それなりに毎日楽しい。ほかに何か必要な事があるだろうか?

フツーに大学に行って、フツーに社会に出て、フツーに結婚して生きてゆく。
そんな将来設計に疑問を持ったこともなかったし、当然そうなるのだと思っていた。

そんな風に生きてきた高校生の俺は、ある日突拍子もない事を言い出した。

「俺、美容師になる!!! 」

大学に進学する前提で入った進学校で、そんな事を言い出す奴はいなかった。担任や進路指導の先生、友達にも驚かれた。

両親ももちろん反対した。

若いうちの情熱ほど当てになるものはない、大学に入って見聞を広めてから判断しても遅くない、ここで進路を誤っても学歴を考えるとのちのち軌道修正が……。
心配してくれたのだと思う。とにかく反対された。

けれども俺は美容学校を進学先に選んだ。
なぜかって?

行きつけの近所の床屋で、ある日イマイチな髪型にされてしまったのが、俺の運命の分かれ目だった。

いつものおじちゃんがいなくて、おばちゃんに切ってもらったところ、いつもの俺のキマった髪型より長くて、長くて! ほかの床屋で切り直してもらうのも面倒だし、散髪代も……と思った俺は、家にあったはさみで自分の髪を切ってみた。
すると、なんということだろう、天才的にすばらしくカットできてしまったのだ。

いま思えば、ステキな勘違いだったのかもしれない。けれども、その勘違いが俺の人生を変えた。

進学する必要がなくなったと思った俺は、その日のうちに塾もやめた。
この即断即決力に行動力。たとえ勘違いに端を発したものだったとしても、すばらしくないか?
両親や教師たちの反対を押し切って、高校卒業後、俺は美容専門学校に進学した。

掲載日:2017年03月17日(金)

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(株)ル・ジャルダン・アカデミー取締役
社団法人ランブス医療美容認定協会理事

尾熊英一(おぐま えいいち)

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