渡邉沙志 Episode2:貧乏との戦い、そして家族への献身 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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意気込んでいたものの、何から始めていいか全く分かりません。
そんな矢先、人生において大きな出来事が起こります。両親の離婚です。

元々、会社員だった父は私が幼い頃に独立。
はじめはうまくいっていたものの、バブル崩壊と共に徐々に不安定になり、決して豊かとは言えない生活でした。いつしか母も働きはじめ、私は妹2人の保育園への送り迎えや夕ご飯を毎日作る生活を続けていました。

一向に良くならない生活が続く中で、父親の数百万という借金が発覚します。それが火種となり、離婚につながりました。

兄弟3人は母方へ。そして私は母も半分を抱えていた借金を返済する為、必死にアルバイトに勤しみました。

生活面でも節約を心がけ、食事はこれまで以上にひもじくなり、食卓にししゃもしか並ばない時もありました。電球のワット数を下げて節約したり、家族で1週間にテレビは1人1番組までなどというルールを設けたり、思い返せば幼い妹たちには苦しい思いをさせていました。

やがて、生活が、家族の身体が、壊れ始めていきました。

まず、母親がアルコール中毒になりました。離婚、子供達の卒業や入学、借金、きっと想像もできない不安とストレスに耐えられず、お酒に甘えてしまっていたようです。

次に、長女が解離性同一障害という精神障害になりました。俗に言う多重人格です。夜中に家を飛び出し行方がわからなくなったり、線路をぼーっと眺めていたり、死にたいと泣きつかれ抱きしめたりした事を今でも鮮明に覚えています。

病院に通わせたかったのですが、何せお金がありません。長女の彼氏にも無理を言って協力してもらい、私も死にものぐるいでアルバイトに励みました。

3年かけてようやく借金返済の目処が立った時、長女と彼氏との間に子どもができました。母としての責任感が生まれたせいなのか、妹の人格障害はすっかり治りました。また、母親もここで正気に戻り、お酒を断つことができました。

家族がようやく落ち着きを取り戻し、私はやりたいことに専念できるようになりました。
“音楽で食っていく”…この決意がさらに強くなりました。

掲載日:2017年05月12日(金)

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作・編曲家・プロデューサー

渡邉沙志(わたなべ さとし)

シンガー団体の結成や、AKB48グループなどへの楽曲提供等、幅広く音楽業界に携わる渡邉沙志さん。両親の離婚、借金返済、母と妹の病。数々の苦難に立ち向かいながらも貫いた彼の音楽道とは!?

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