500人の観客がいる。
心臓は高鳴っている。
恐怖もある。
それでも、ぼくはここに立ちたかった。本当の自分をさらけ出したかった。
大・恩送りフェスタとは、夢を叶えたい人が自分の想いを発表するイベントだ。今まで受けてきた恩を返すのではなく、別の誰かに「送る」。そんなコンセプトで開かれている。
ぼくがこのイベントに出ようと思ったのは、認められたいという強い気持ちがあったからだ。
ぼくは睡眠障害のせいで信頼を失ってきた。それでも、自分はなにかができる人間だという想いが、胸の奥にあった。なんとかしてそれを証明したかった。他人から評価されたいという欲求があったのだ。
500人の観客の前に立って発表をするなんて、今までのぼくだったら考えられないことだ。本番の前は緊張したけど、ステージに立ってみる、見たことのない景色が広がっている。ライトはきらめいて、目も開けていられないくらいだ。観客の息遣いと興奮が、自分のもののように感じられた。観客も楽しそうで、気付けばリラックスして話せていた。結果なんと準優勝したんだ。
自分が話していることが、こんなにも多くの人に伝わっているんだなと思うと嬉しかった。自信もついて、それから先のイベントにも関わらせてもらっている。
カウンセラーによると、ぼくの人生は普通の人だったら自殺するほどつらいものらしい。実際、辛いこともたくさんあった。それでも生きてこられたのは、料理という希望と、実家のレストランを継ぎたいという想いがあるからだ。
実家のレストランで働いていた頃にも遅刻をしていたので、いま戻れば従業員からの反発はあるはずだ。それでも、ぼくはあの店を経営したい。食のテーマパークのような場所にして、だれでも子供の頃に戻れるような場所にしたいんだ。
飲食業界を変えたいとも思っている。労働時間が長くて給料も低いという実態を改善して、頑張っている人が報われる世界にしたい。世界中の料理人が幸せになれるようにしたいんだ。
かつてのぼくも、飲食業界で辛い目にあった。休みは週に一度で、保険は未加入、有給もない。料理の説明を間違えただけでシェフに平手打ちをされる。口の中が血だらけになったこともあった。
そんな境遇でも、希望があったからこそ、ここまでこれたんだ。どんなにつらいことがあっても、希望を失わないで生きていきたい。
この記事を読んでいる人も、大変なことがたくさんあると思う。それでも、前を向いて生きてほしい。辛いときこそ希望を信じてほしい。
ぼくの人生は「やらかしまくっている」と言ってもいい(笑)睡眠障害による遅刻グセなどで散々チャンスを失って、嫌なことからずっと逃げてきた。そんなぼくでも生きてこられたし、今は多くの人に支えられて仕事ができている。
これからの人生では、もっと多くの人に希望を届けたい。
料理という希望のおかげで、つらいことを乗り越えて生きてこられた。それがぼくのKey Page。
掲載日:2018年10月05日(金)
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