真鍋徹也 Episode1:オトコってものに憧れて。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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オトコ。
男ってものに憧れて生きてきた。男っていうより、漢って感じかもしれない。

東京の阿佐ヶ谷で育った割に外遊びが多いので、転んだり傷を作ったりすることも日常茶飯事。
「泣くんじゃない。男の勲章だ! 」
母ちゃんや父ちゃんはそう言って傷にバシャバシャ水を掛けて、唾をつけてくれる。
近所の子を束ねて木登りしたり裸足で駆け回ったりする、ガキ大将みたいな存在だった。

福島のじいちゃんの影響もあるかな。漁師町の漁師で、明るくて人気者の、カッコいいじいちゃんなんだ。
「カッコいい男になりたい」なんて考えるまでもなく、男ってこういうもんだっていうのを心に持って育った気がする。

父ちゃんは看板を作る職人だ。これもまた男らしくてカッコいい。
「人様に迷惑掛けないなら、好きな事やったらいいよ」そんなふうに言われてきた。
母ちゃんには「料理、向いてるかもね」って言われたこともある。のびのび育ててもらった。

人と同じ事がしたくなくて、学校で特定のゲームが流行ると僕はベーゴマを流行らせたりした。
休み時間にクラスメートたちがゲームを始めると、僕は自分のグループの5人をイイ具合に配置して、先生が来たら急いで伝言ゲーム。
先生に見つからないようにチームプレイするんだ。
自分が流行に乗るより、人がそれを楽しめるような環境を作る側に立って、段取りを考えたり試したりするのが好きなんだ。

クラブチームや部活でサッカーをしてきたけど、部員120人の高校では頑張っても3軍までしか進めなかった。
そこで腐っちゃう仲間もいたけど、男はそうじゃないだろ。僕は、自分にできる事にひたすら励んだ。
体育祭の応援団ってやつに憧れて、2年生からはそこで頑張りたいと思った。うちの高校の代名詞になっているくらいのビッグイベントなんだ。

彼女が欲しいと思ったことはないけど、好きな子は常にいた。もちろん毎回猛アプローチした。
ひとつひとつが本気なんだ。惚れた女に本気になれないなんて、男じゃない。

そして、2年生、応援団に。絵に描いたような縦社会だ。
下級生は「押忍」しか言っちゃいけない。めちゃくちゃ走らされたり腕立て100回とかさせられたり。応援歌を泡噴くまで歌ったこともある。
誰よりも根性があって声のでかい僕は、翌年のリーダーに選ばれた。
知らなかったんだけど、ある決まった部のメンバーが翌年のリーダーになるっていう慣わしがあったらしくて、僕がそれを破る形になった。

もちろん、応援団だけやっていたわけじゃない。いつだって恋していたし、文化祭なんかも楽しんだ。
クラスメートがメンバーを募って和太鼓を披露したのなんか、めちゃくちゃかっこよかった。

3年生で、みんなの羨望を集める応援団長に。めちゃくちゃモテた……のはそれとして。
過去の応援歌を分析したり、自分の組をまとめ上げるために試行錯誤したり。
普通の高校は体育祭にどのくらいの時間を掛けるんだろう?
うちの高校でも代ごとにバラツキはあるんだけど、僕らは体育祭半年前から本格的に練習を重ねた。

そして本番、優勝。

泣いた。クソ泣いた。男泣きってこういう涙のこというんじゃないかなあ。

青春ど真ん中みたいな思い出を胸に、僕はスポーツトレーナーの専門学校に進学。
そのころ友人に紹介されて、高橋歩さんの『サンクチュアリ』という本を読んだ。
“自由”っていう言葉に感銘を受けた。自由って、何でもかんでも好き勝手するってコトじゃない。
考え方の自由とか、本質的な自由とか……何か、人間にとってめちゃくちゃ大事な事を言っているんだなって伝わってきた。

トップを取るつもりで入った専門学校、実際男子では一番をキープしながら、だんだん「トレーナーじゃない」っていう気持ちが大きくなってきて。
「自由……俺が自由なら、何をする? 」「トレーナーじゃないなら、何だ? 」
自問自答して行き着いた答えは、料理の道だった。母ちゃんの言葉もある。父ちゃんが職人だってこともあると思う。

阿佐ヶ谷の街を歩いて、ピンと来たトルコ料理屋さんに突撃。生まれて初めて飲食店でバイトさせてもらった。
まともに日本語をしゃべれる人はいなかったけど、笑顔と気合いで乗り切った。
下ごしらえとかビールの注ぎ方とかを覚えた。何より、飲食店の忙しさや大変さを経験させてもらった。

トレーナーの専門学校から料理の道に進むなんて、親には驚かれたけど。
「人に迷惑掛けなければ」って育ててくれた両親なので、最後には納得してくれた。
「飲食は楽じゃないぞ」と止めてきた先生には「楽したくて飲食に行くんじゃねえっすよ! 」と反論したくらいだ。

あとは、背中で見せるだけだ。背中で家族を安心させたい。
男は、背中で語らなくっちゃな。

掲載日:2018年12月04日(火)

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