石川玄哉 Episode3:現実に戻り激務に追われる日々、ふとしたキッカケで… | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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そんな最初の旅を終え、僕は大阪で工作機械や家庭用品を扱う商社に入社し、たまたま量産品の激安家具を扱う部門で働くことになった。
人事からは「一番忙しい部署に配属してやった。」と言われ、学生の時には想像もできないほど毎日が戦争のような忙しさだった。
上司には怒鳴られ続ける毎日だった。

そんな毎日から逃れるために、休みを利用して頻繁に石垣島に足を運ぶようになった。
宿泊するのはいつも決まってあの「月桃屋」。
そこで出会う旅人たちとの時間はやはりとても楽しく心をワクワクさせる。
普通では考えられないようなことを平然とやる旅人たちの自由な生き方に触れる度に、「自分は本当に人生を楽しめているのだろうか?」そんな疑問が次第に大きくなっていった。

それでも現実は襲ってくる。
一度日常に戻れば、あの楽しかった記憶を思い出す余裕もないほどに終わりのない仕事に追いつめられる。
「自分は本当に人生を楽しめているのだろうか?」その思いだけは消えることはなかった。

ある時、学生時代最初に石垣島に旅をした親友が北海道から家に泊まりにきた。
こいつも今では立派にサラリーマンをやっている。
久しぶりに会うことを感じさせないほど、僕らははしゃぎながら酒を飲み交わし、学生時代やあの石垣島での思い出、そして会社や将来の話も沢山語り合った。

そんな中、親友がふとこう言った。
「玄ちゃんは凄いね!普通サラリーマンって日曜の夕方くらいになると仕事のことを考えてテンションが落ちていくものなのに、玄ちゃんは変わらないよね!よっぽど仕事がすきなんだなぁ。」 確かに不思議だった。
別に仕事が好きなわけではないし、かといって自分は感情が出にくいタイプでもない。
それなのに今まで会社に行くのが嫌だ。
と思ったことが確かになかった。

その日以来、そのことが気にかかっていた。

自分はなぜ、自由を求めながらも、会社に居続けるのか。
何が自分を引き止めているのか。
ふと目に入ったのは自分が扱っていた商品だった。

「家具…」

その時気付いた。
自分は仕事ではなく、扱っている商品、つまり家具が好きだからこの仕事を続けられたのだと。

掲載日:2018年11月27日(火)

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木のオーダーメイド家具屋
『百年家具 KIJIN』代表

石川玄哉(いしかわげんや)

木のオーダーメイド家具屋を経営する石川玄哉さん。 何の特徴もない普通の人生を一変させたのは、旅人の生き方そのものだった。

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