大学4年生の冬。
親友と二人で旅行にいくことになった。
普段の喧騒から逃れたくて、とにかく人の少ないところを探したどり着いたのが石垣島。
透き通った海、木々が生い茂る空気の澄んだ山々、せせらぎを奏でる川の流れ。
「これぞ旅だな〜」
普段感じることのできない大自然や、この島でしか食すことのできない郷土料理の数々に僕たちは心が癒されていった。
辿り着いた「月桃屋」という民宿は、宿泊する人たちが自然とリビングに集まってくるようなアットホームな場所だった。
今で言うシェアハウスのようなもの、と言えばわかりやすいかもしれない。
そこには僕達の他にも沢山の旅行客がいた。
現実逃避しに来た人、スキューバダイビングしに来た人、友だちに会いに来た人。
職業も、会社員、社長、フリーター、ニートと様々。
オフシーズンに来ていたこともあり、自分の枠の中では考えられないような変わった人が多かった。
職業も目的も年齢もバラバラだったけれど、この場所ではそれが全く関係なかった。
僕らはそんな旅行客と酒を飲み交わし、他愛もない話や真剣な話も時間を忘れて楽しんだ。
だいぶ酒もまわりはじめた頃。一人がこう言った。
「星を観に行こう!」
そこにいた全員で外にでた。沖縄といえど冬の夜は肌寒く、しかしその分空気が澄んでいた。
その場にいた全員で見上げた星空は、都会では見ることができないほどとても大きく、感動と同時にこれまでの自分の儚さを感じさせるものだった。
そうやって僕らは毎晩語り明かし、気付けば旅の仲間となった。
帰りの飛行機の中では楽しかった石垣島の思い出に親友との会話が弾んだ。
「次はいつ行こうか?」
石垣島の、そして何よりそこに集まる旅人との出会いに惹かれていた。
掲載日:2018年11月27日(火)
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木のオーダーメイド家具屋
『百年家具 KIJIN』代表
石川玄哉(いしかわげんや)
木のオーダーメイド家具屋を経営する石川玄哉さん。 何の特徴もない普通の人生を一変させたのは、旅人の生き方そのものだった。