飯田崇秀 Episode4:自分の意志が未来をより良くしていく | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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国家試験をパスし、大学を卒業した僕は、理学療法士としてつくば市の急性期の総合病院に入職した。

大学の実習とは違って、責任は重い。でも、全ての責任が自分にあるから、自分のやりたいと思ったことをできる。患者さんと1対1で向き合いながら、その人に会った処置を考えていく。その人に人生に寄り添えることが楽しくてしょうがない。患者さんの笑顔を見ていると、充実感がある。

理学療法士はリハビリを通してその人の人生を手助けできる職種だ。それを任せてもらえる、なんてありがたいことなんだろう。僕がしたかったことはこういうことなんだ……!

菊池先生の顔を思い出す。先生はいつも穏やかな笑顔で僕と関わってくれた。今、僕も誰かにとっての菊池先生になれているかもしれない。

そんな手ごたえを感じる一方、自分のやっていることに疑問も出てくる。

リハビリテーションは西洋医学的な考えが基準になっている。でも、僕を救ってくれた先生の施術は西洋的な面も東洋的な面もあって独特だ。医療機器を使わず、徒手で原因不明の病気も治してしまう。いま僕がやっていることは、目的は同じでも方法は全然違う。仕事で扱う西洋医学と、僕を救ってくれた東洋医学的なアプローチ、その二つの間で僕は板挟みの状態だ。

僕のいる病院は、怪我や手術をしたばかりの人、もしくは手術直前の人が多い。患者の傾向が決まっているからマニュアルができている。
「手術後一週間はこういう運動をこれに気を付けて行う」
「その次はこのメニューにしたがって……」
こんな感じだ。

プロトコル(対処法)がマニュアル化されているのはいいことだと思う。ただ、患者さん一人一人と向き合い切れない違和感もある。同じ怪我をした人でも、個々人によって生活歴や生い立ちによって適切な対処法は変わるんじゃないだろうか?

その違和感をどうにかするため、休みの日に色々な勉強会に参加するようになった。

僕の持つ技術次第で患者さんの人生が変わる、だからもっと技術を磨かなくちゃ。……そう思っていったけど、その義務感にすら疑問がわいてくる。

同じ怪我や病気でも、人によって治りやすさや予後に違いが出てくる。これはおかしい、なんなんだろう。最適な処置をしているはずなのに……。

勉強を続けているうちに気づいた。技術だけじゃダメみたいだ。じゃあ何が必要なんだ……?

違和感を追いかけているうちに、二年が過ぎていた。そんな折、大学時代からの友人である米山くんが、僕をあるセミナーに誘ってくれた。

そのセミナーはセラピスト向けのもので、東洋医学系のものや鍼灸、自然治癒力を高めるようなアプローチを扱った内容のものだった。

「こんなの学校じゃ全然やらなかった……こんなアプローチがあるんだ……!」

セミナーに通っているうちに主催の団体と関わることが多くなってきた。そこで西洋医学以外のことを学んでいるうちに、病院での違和感がだんだん大きくなっていく。

僕が働いている病院は規模が大きい。だからスタッフそれぞれの個性よりも統率が求められる。右と言われたら右を向かなければいけない、そんな環境だ。

一方で、僕は「左もあるでしょ!」って言って左を向いてしまいがちだ。この患者さんにはこういうアプローチもあるんじゃないかなんて提案する。そうしているうちに、だんだんと職場の人たちから煙たがられていた。

病院に所属している以上、上司のいうことはきかなきゃいけない。でも、本当にこれでいいのかな……。

「千葉の柏におもしろいことやってる人いるから一回行ってみなよ」

米山くんが紹介してくれたのは、起業家セラピストの永井先生という人だった。

永井先生の施術を勉強すれば、何か変わるかも。さっそく僕は先生の元を訪ねることにした。

「あー、これやばいね。あなたが治療受けなきゃだめよ」

僕の体を診ていた先生が声をあげた。


「左の腰に穴空いてる」

「え?」

「魔界に繋がってるわよ。どうしたの?」

穴?魔界?なんのこと?

先生は、患者の「前世」に焦点を当ててアプローチする人だった。
今までの過去、行動を紐解いていくと、今の状況との因果関係が分かるというのだ。

僕は先生に今までのできごとを打ち明けてみた。先生曰く、僕の辛い過去や今の悩み全て、僕の前世での行いに因果があるらしい。

医学について勉強しに来たのに、いつのまにかスピリチュアルの話になっている。突拍子のない話だけど、疑う余地はない。僕自身、菊池先生の施術で原因不明の病気が治ったのだから。

実際、永井先生の施術で心身が元気になっていくのを感じる。

「人が元気になっていくにはこういう世界にも目を向ける必要があるんだ……!」

勉強してどうにかなることじゃなさそうだ。僕は一度、今までの自分を改める必要があるかもしれない。

先生のサポートのもと、僕は「セルフケア」を始めた。

「自分のことは自分で元気にできる。人にはそういう力があるのよ」

ふと、菊池先生のことを思い出した。

セルフケアを実践しながら、僕は自分の過去や悩みを振り返ってみた。

病気のこと。学校で周りとなじめなかったこと、実習のときのこと。そのときどきにどんな感情が起こったのか向き合うと、僕の中の醜い部分が浮彫になっていく。

僕はプライドや自己顕示欲高くて、他人のことをバカにしていた。でも、その傲慢さの根本は、自分の中にある無価値感、「自分にはどうせできない」「自分は誰にも愛されない」そんな絶望感だった。

学校で周りと距離をとっていたのも、勉強や実習で人を頼れなかったのも、自分の弱い心を守ろうとしたからだったんだ。

こんなこと知りたくない、認めたくない。恥ずかしさと自己嫌悪で気分が悪くなってくる。でもこれは、今向き合わないと僕は変われない。

「このときこんなことを考えていたんだ」「僕はこうしたかったんだ」「本当はこうするべきだったんだ」と、自分の過去の様々な場面に向き合っては、そのときの自分を「正しい道」に導く。ボタンのかけ違いをなおすように。抽象的な作業だけど、そうすることで、今まで僕を振り回していた欲やプライドが、自分の中から解き放たれていくのを感じた。

今の僕は整体やカウンセリング、講演会、色々なことをやってる。

人に「何をしてる人なの?」って聞かれると、ちょっと答えづらい。でも、どんなことをしているときも僕が目指していることは変わらない。

本来の自分とつながりなおすこと。

今の現実を創っている意識や心身の状態を自分の内側と対話することで、本当の自分が選びたかった在り方や道を選びなおすこと。

僕の行動は、全部そこにつながっている。

両親をはじめ、菊池先生や米山くん、永井先生、いろいろな人と出会ったことで、僕は生かされ、色んな可能性をもらい、自分と向き合うことができた。

人との出会いが人生を変える。そして、自分と向き合い理解していくことで、未来は自分の望む方向に進むんだ。

これが僕のKeyPage。

掲載日:2019年11月29日(金)

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S-PACE (エスペース)代表

飯田崇秀(いいた たかひで)

整体やカウンセリングを通じて心と体の両面からアプローチする「スピリチュアルセラピスト」の飯田崇秀さん。重い病気や他人とうまく繋がれないことに悩んでいた彼は、たくさんの貴重な出会いによって変わったのでした。

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