初芝恵梨菜 Episode3:誰かが治してくれるわけじゃない。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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摂食障害外来に通い始めた。けれども、精神科の先生たちは過食症を経験したわけじゃない。
理論でものを理解し、理論でアドバイスする。それは無理もないことだけど、ボロボロに傷ついていたあたしの心に届く言葉はほとんどなかった。
救いになるのは精神科の先生の言葉ではなく、過食症当事者のブログやコミュニティを覗く時間だった。
「あたしと同じように苦しんでる人が、こんなにたくさん……」

それがどこか心に残っていたからかもしれない。
過食症専門のカウンセラーとのご縁があった。過食症経験者だった。
彼女自身のストーリーを聴いた時、その言葉はあたしの心にすんなり入ってきた。
「誰に頼っても甘えてもイイけど、最後は自分で克服しなきゃいけないんだ」

少しずつだった。本当に少しずつ。
病院に通いながら、自分が夢中になれるものを探し、ひとつひとつ試すようになった。

摂食障害は完治の難しい精神疾患。自死に至るケースも多く、長ければ10年、20年と付き合ってゆく病気。
発症のきっかけの8割がダイエットだと聞いた時、なんともいえない気持ちになった。
数年前、やせろと言われてやせた時、あたしはうれしかった。
ダイエットも美容も、本来しあわせになるためにするもの。
それが度を越したり、また「やせなきゃいけない」という強迫観念が動機だったりすることで、完治の難しい病気のきっかけになってしまう。
そのからくりが悲しかった。

エステでもどこでも、メンタルや食事まで見てくれるところは少ない。数字の結果にコミットして結果を出すだけ。
それは業界の常識なのかもしれないけれど………。

お医者さまの言葉は耳に入らなかったあたしだけど、過食症経験者の言葉は心に届いた。
あたしが治すと決めなきゃ治らないんだと気づけたのも彼女のおかげ。
過食症経験者であるあたしがメンタルケアもできるエステをするとしたら、過食症に苦しむ女の子の減るのに貢献できるんじゃないか。

「女社会でつぶれたお前に、エステ業界なんて無理だろう」
善意からのそんな忠告もあったけれど、あたしは百貨店を辞め、エステサロン勤務を経て独立した。
過去のあたし、ほんの少し前のあたしみたいな子の力になりたくて。
自分を苦しめるダイエットや美容ではなく、しあわせになるための美容を広めたくて。

掲載日:2017年10月06日(金)

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パーソナルダイエット専門店 Romantic Divaオーナー
エステティシャン/心理カウンセラー

初芝恵梨菜(はつしば えりな)

18キロの減量、20キロのリバウンド。過食症経験者の初芝恵梨菜さんは、現在ダイエットサロンを経営しています。「経験者でなければ届かない声がある」サロン経営に懸けるおもい、そこに至るストーリーとは……?

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