浜松幸 Episode1:恋ってヤツを知って | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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年上の女の人が好き。姉ちゃんが大好きだし、家の後ろの女子大に通うイケてるお姉さんたちが好き。
嫌いなものは、フリフリスカートとかカワイイ洋服。
リカちゃん人形には興味ない。幼馴染たちと戦隊モノのごっこ遊びするほうがイイ。

赤いランドセルがイヤでイヤで、黒マジックで塗りつぶそうとして怒られた。
仕方ないからランドセルを学校のロッカーに置きっぱにして、吹奏楽部の練習にかこつけて遅くに帰る。

放課後の早い時間は先生が校門に立ってるでしょ? 見つかっちゃいけない。

朝は誰より早く登校。
用務員のおじさんが校門の鍵を開けると同時に入れば、先生には見つからない。そう、ランドセルを背負ってなくても怒られない。

中学に上がる時。セーラー服が嫌だった。学ランで通いたいって言ってみたけど……、もちろんダメだった。

中学生といえば、恋バナ。それしか話題がないくらい恋バナ。「恋愛こそすべて! 」みたいなの、あるでしょ?

「浜松さんは? 好きな人いないの? 」

一番困る質問だ。好きな人……気になる人ならいる。
だけど、それは女の人。それがクチにしちゃいけないってことは、なんとなくわかってた。
だから、誰も好きにならなそうな男子を選んで好きだってコトにして、話を合わせた。

みんな、片想いにハラハラしたり、両思いになってルンルンしたり。嘘っぱちじゃなくて恋を楽しんでいる。

それとは別の話。女子あるある。グループで誰かが順番に仲間はずれになっていくやつ。順番が来た。

中2の終わり。
「もう一緒に帰らないで」の一言に、学校へ行けなくなった。

いっぽうで、学校以外の場所があった。
地元の吹奏楽楽団。そこには中学生から大人まで年齢の幅が広い人たちがいる。

「いいじゃん。学校なんか別に行かなくても。大丈夫だよ」

もし、学校が世界のすべてだったら……視野が狭くなってたかもしれないけれど。
ありがたいことに、年上のお姉さんたちとの交流で気持ちが楽になって、じきに学校にも戻れるようになった。

ただ、もうひとつ問題があった。
絶対に受かるはずだった第一志望の高校に落ちた。
そこは、私服で通える都立高校。制服が嫌な自分にとって憧れだった。

人生ではじめての大きな挫折。高校受験に落ちるなんて……。

でも、そんなことも言ってられず、二次募集で商業高校を選び挑んだ。
どうにか無事に高校生にはなれるみたい。

ただ、制服のある、女子率がとっても高い学校だった。
入学してみると、やっぱりメインは恋バナ。
自己紹介と同時に「彼氏いるの〜? 」ってな具合だ。

「ちゃんと“女子高生”やらねば……! よし、彼氏作ろう……! 」

そう決意して、言い寄ってくれた男の子と付き合うようにした。
だけど、なかなか難しい。うまくいかない。そして、考える……。

「Aくんがダメでも、Bくんならいけるのかも? Cくんなら好きになれるかも……」

でも、イイ奴だとは思うけど、友達以上の感情が持てない。
なんなら、デート中に、「あの子かわいくない? 」って女の子を追いかけちゃう……。うーん……。
相手を変えても、付き合い方を変えても、ダメだった。何人付き合っても、男の子に恋することができなかった。
それ以上に、吹奏楽のお姉さんとかバイト先の先輩ともっと仲良くなりたい気持ちのほうが、どうしたって大きい。

吹奏楽から興味が広がって、アコギをはじめた。
それがキッカケで、別のクラスの“カナ”と話すようになった。カナちゃんはバンドをしている。
オススメの曲をMDに焼いて貸してくれたりしてた。かわいいバンギャの友だちが出来た。


仲良くなってからすぐ。高校2年の9月、修学旅行! 北海道に行った。
部屋はクラスのグループごと。

夜、カナに呼ばれた。
先生の見回りがあるから、怒られないように同じ布団にもぐって、見つからないように……。
何でもない話、音楽の話とか学校の話とか……いろんな話をした。とっても楽しいナイショの時間。

ふと見上げると目の前にカナがいる。ち、ちかい……。
意識しだすと止まらない。ドキドキする。心臓の音、聞こえてるかもしれない……。
嬉しさとドキドキが限界を超えて、言っちゃった……。
「こんなに顔近かったら、チューしちゃうかもよ? 」

言ったと同時に、もうしちゃってた。でも、自分からじゃない。されたんだ。
え……? え……? ん……? は……? あ、やわらかい……。じゃなくてーーー! うわぁーーー!!

完全パニック状態。と同時に、嬉しさやらなんやら……。

もちろん、ファーストキスなんかじゃない。
女子高生するって決めて、いろんな男の子と付き合った。キスだってエッチだって経験してる。

違う。

いままでと、全然違う。


……これが、恋ってやつじゃない?
だって、ドキドキして、止まらないもん。


「やっぱ……女の子好きなんだなぁ。カナのこと……好きだわ」

修学旅行を終えて東京に戻ったら、カナとのことが噂になっていた。「あの2人、何かあったらしい……? 」
誰が何を見ていたのか、聞いたのかわからないけど、これはマズイ……。
自分のこと言われるのは構わないけど、カナがいろいろ言われるのは困る……。

打ち消すために、言い寄ってきた男子と付き合った。噂はすぐに消えた。

それが、9月末の話。
この人と年を越せたら、もう女の子が好きとか考えるのやめよう。
でも……もし……年末までに別れたら……

その時は、女の子が好きなんだって認めよう。


結果は、後者だった。
いろいろ試してみたけど、カナに抱いたドキドキを超えることはなかったってこと。
最後の彼氏とはクリスマス直前に別れた。

“レズビアン 出逢い”
インターネットの検索画面に打ち込む。

もう、自分に嘘をつかないと決めたから、出逢い系のチャットサイトにアクセスした。

同じ境遇の友達が欲しかった。自分がどういう存在なのか知りたかった。

そこで悩み相談をしたり、知識を教えてもらったり、雰囲気の合いそうな人とは実際に逢ってみたりした。
文章からはわかんない事も多いし、顔写真もない。年齢詐称とか、会ったら全然イメージと違う……とかのハズレもあったけど。

いろいろな人に会っていき、しばらくすると超カワイイ25歳の彼女が出来た。内田有紀似! 人生初の彼女!!


もう……嬉しくて嬉しくて。
クラスの女の子たちが彼氏自慢をしたり愚痴を言ったりするあの気持ちが、やっとわかった。こんなに好きな存在が出来て、付き合うことさえできたら、そりゃ友達に話したくもなるわ。

あぁ……クラスの仲のいい子たちに彼女のことが話したい……。その気持ちが日に日に増す。

でも、レズビアンの仲間にチャットで相談したら、猛反対!!!
「絶対やめたほうがいい! 」「友達なくすから……」「批判されるよ」
カミングアウト経験者には、苦い思い出があるようだった。

でも、話したい! 話したーーーーい!!! 恐怖よりも欲求の勝利。
カワイイ彼女のこと自慢したい!!
もしそれで友達が離れるっていうなら……その時は、学校辞めてもいいかもしれないよなーなんて考えた。

仲のいい6人を放課後呼び出した。
「バイトあるんだから、早くしてよ」なんて言いながら、みんな集まってくれた。

嫌われたら退学しちゃえ、くらいの覚悟はあったものの、いざとなると怖さも生まれる。


「もうこいつらと友達でいられなくなっちゃうのかな……」
なかなか切り出せない。

でも、言わなきゃ。ありったけの勇気を振り絞って、言った。
「もしかしたら、いまから話すことで、友だちやめたくなるかもしれない。それはそれだと思ってる。
 ……。彼女が出来た」


「……言いたかった事ってそれ? 」


「浜松、女の子好きだったでしょ? 」
「うちら知ってたけど。じゃ、バイト行くわ〜」
「別に誰と付き合ってようと、浜松は浜松だかんねー! はい、おつかれー!」

一世一代の大告白のつもりだったのに、みんなにとっては”いまさら”な話だったみたい。こっちは拍子抜け……。

でも、「この高校を選んでよかった! 」って心底思った。
最初に話した友だちがこいつらでよかった、って。とってもありがたかった。

その後も、何も変わらない、いままでどおりの……いや、それ以上に幸せな生活が続いた。

「こんなカミングアウトもあるんだなぁ……」

たまたまラッキーなケースだっただけかもしれない。
チャットで言われてた事のほうが大多数なのかもしれない。

それでも、めちゃめちゃ嬉しくて信じられない……。
彼女と付き合っているのに、それがオープンにできる、いままでどおりの仲間たち。


ずっと気づかないようにして、気づいてからも認められなかったのに。

そっか。女の子が好きなのって、別に悪いコトじゃないんだ……。

掲載日:2019年04月26日(金)

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株式会社シンカ マーケティング部 部長代理、NPO法人コモンビート 広報

浜松幸(はままつ こう)

女性の身体で生まれたものの、自分の身体の性別に違和感を抱いていた浜松幸さん。“本当の自分”に気づいてゆき、自身が“男性”であると認識、「幸」という新しい人生を生きてゆくさまを振り返りました。

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