初芝恵梨菜 Episode2:食べることだけに救いを求めて。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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「あんた……こんなクレームが来るなんて、どんな接客してんのよ?」
生活のため百貨店の美容部員として就職したあたしは、女性社会の上下関係や求められるものの厳しさにすっかり参っていた。
「できないとこ全部書き出して休憩室に貼っといたから」
きつい事を言われたりひどいクレームで叱られたり翌日には、感謝状が届いたりする。何が正解で何が間違いなのか、さっぱりわからなかった。

お昼休憩や休憩時間にもっと食べなさいと勧められることが一番の苦痛だった。
「そんな細いんじゃイイ仕事もできないでしょ」「スタミナ要るんだから」「遠慮しないで」
もっと食べなさい、もっと食べなさい、もっと食べなさい………。
どうして!?あんなに努力してこれだけやせたあたしに向かって、どうしてこの人たちは食べることを強要するの!?やせていることがあたしの価値なのに。

彼女らが鬼か悪魔に見える。この世のすべてがあたしを太らそうとそそのかしてくる……!!!!!
ゆるせない。耐えられない。助けて………。

気づいた時には、周りにコンビニの菓子パンの袋が散乱していた。

「……あたしが、これを?全部?」

目の前の光景が信じられなかった。
あれだけ自分を律して体重を維持してきたあたしが………食べちゃった!食べちゃった!食べちゃった……!!!!!

月に10万近くを食費に使う生活が始まった。

嫌味を言われながら仕事はなんとかこなす。解放されたらコンビニやスーパーに駆け込んで、菓子パンを買いあさる。
アパートに駆け込んで、レジ袋からそのままパンをお腹に詰め込む。
楽しいわけじゃない。おいしいわけじゃない。味なんかわからない。食べている時だけは何も考えずにいられる……。
食べれば自己嫌悪するとわかっていても、食べているあいだというわずかな時間に救いを求めて毎日食べ続けた。
冷蔵庫にものの残っていることがストレスだった。冷蔵庫を空にするとホッとした。けれどもすぐに食べたくなってコンビニに向かう。エンドレス。
1回の食事は4人前。ファミレスに入ればひとりで2000円使った。人と食事に行くことも、会うことすらしなくなった。

なんとか吐きたかった。どんなに食べても吐いてしまえば帳消しになるはず……。
トイレで1時間ねばって吐こうとしても吐けなかった。酔えば吐けるかもしれないと、浴びるようにお酒を飲んだ。
吐けないのでお腹だけがぽっこり出る。1年で18キロやせた体重は、気づけば20キロリバウンドしていた。
休日に家にこもって昼も夜も食べ続け、便器を抱え込んで吐こうと呻いていると、そんな時に限って知り合いのデビューの話が聞こえてきたりする。

音楽もできていない、仕事も中途半端、食べるばかりで吐くこともできない、姿はどんどん醜くなる……。
何の役にも立たない、やせても夢も叶えられないあたしなんか、このまま食べ続けて病気になって運ばれてしまえば……死んでしまえばいいのに……。

掲載日:2017年10月06日(金)

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パーソナルダイエット専門店 Romantic Divaオーナー
エステティシャン/心理カウンセラー

初芝恵梨菜(はつしば えりな)

18キロの減量、20キロのリバウンド。過食症経験者の初芝恵梨菜さんは、現在ダイエットサロンを経営しています。「経験者でなければ届かない声がある」サロン経営に懸けるおもい、そこに至るストーリーとは……?

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