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キッカケインタビュー

過食は治るし、夢は叶う――過食症経験者だからこそ届けたい言葉。

初芝恵梨菜(はつしば えりな)

パーソナルダイエット専門店 Romantic Divaオーナー
エステティシャン/心理カウンセラー

この鍵人のコンテンツ:

キッカケ記事

いま何やってるの?
パーソナルダイエット専門サロンRomantic Divaを経営し、施術をしながら、サロン内外で女の子がしあわせになるための活動をしています。過食症や摂食障害に苦しむ女の子に届くよう、心を込めて。

18キロの減量、20キロのリバウンド。過食症経験者の初芝恵梨菜さんは、現在ダイエットサロンを経営しています。「経験者でなければ届かない声がある」サロン経営に懸けるおもい、そこに至るストーリーとは……?

キッカケ①:ガリガリの体だけが残って。

ものごころついたころから、あたしは歌っていた。


パパは、おじいちゃんの会社を継ぐために夢を諦めた。
パパのバンドに憧れて歌を歌い始めたあたし。パパは喜んでくれた。子どもが楽しそうに歌っていれば、大人はちやほやしてくれる。

兄ふたり妹ひとりに両親の6人家族。パパやママの関心が惹きたかった。
歌は心底好きだったし歌えば周りが喜んでくれることもうれしかったけれど、
「成功しなきゃ」「人と違った事をしなきゃ」「パパの諦めた夢をあたしが叶えなきゃ」というおもいもどこかあった。
裕福でキレイな友人たちと比べてしまう劣等感も強かった。歌手になればお金が稼げる、いまみたいに我慢しなくて済む、そう思っていた。
母親がピアノ教室をしている親友や、バイトもせずに青山の短大に通える華やかな同期たちに劣等感を抱きながらも、
「あたしには歌がある」と言い聞かせては日々暮らしていた。

短大の2年に上がるころ、音楽でやってゆくと言いながら具体的な行動をしていない自分に気づく。
自分の人生だもの、捨て金になっても構わないと思い、バイトで稼いだお金で養成所に通い始めた。



音楽で勝負するかぎり容姿は関係ない。そう信じていたあたしは、そこで業界の現実を知った。
「女の子はやせてないと話にならないからね」
元からかわいい裕福な同期たちへの劣等感を「勝負するものが違うんだから」と見て見ぬふりしてきたあたしへの、容赦ない言葉だった。
「音楽をするにも容姿が大事なの……?」

自己流のダイエットを始めた。お金もなかったので、SNSで見つけた自宅サロンの体験モニターを利用したりした。
モデルの子も通って来るというあるサロンで「極論、彼女らは食べてないわね」と言われたことから、ものを食べないというやり方で体重を落とし始めた。


朝ごはんはスムージー。お昼は持参したお弁当。夜は食べない。
一日の摂取カロリーが800kcalを超えないように気をつけた。そして、毎日短大まで1時間掛けて歩いた。
3ヶ月で10キロやせた。うれしかった。努力がやっと形になった……!!!

けれども、やせたところで芸能活動が順調になるわけではなかった。
あたしがそんな努力の果てに体を絞って絞って、でも音楽の仕事もそれ以外の芸能の仕事もなかなか取れない。
そんな時に限って、元が恵まれたお金持ちの同期が原宿や表参道でスカウトされて読者モデルになって……人気が出て……。
惨めだった。売れる人は何もしなくても売れちゃうんだ。
努力しても報われない。でも、元がこの程度のあたしがここで努力をやめたら、いったい何が残るんだろう。

日に何度も体重計に乗った。体重の増減に一喜一憂した。
生理が止まった。疲れやすくなったり、ふらふらしたり。若年性更年期障害の症状だった。
オーディションに行くたびに、あたしよりやせている女の子たちを目の当たりにして打ちひしがれた。
「この業界の子はみんな体張ってるから」
「元が細い子だけじゃないよ。みんなダイエットして現状掴み取ってる」
そう言われてしまえば言い訳はできない。もっとやせなくちゃ。もっともっともっと。

1年で18キロ落とした。
短大の友人たちの目が以前と変わっていた。
何だろう。どうしてそんな、怖いものを見るような目で見るの? あたしはこれだけやせてやっとキレイになれたのに。

けっきょく、歌で実績を残すこともデビューの手掛かりを掴むこともできなかった。
養成所は1年で卒業し、同時に短大も卒業。ガリガリにやせた体だけが残った。二十歳だった。

キッカケ②:食べることだけに救いを求めて。

「あんた……こんなクレームが来るなんて、どんな接客してんのよ? 」
生活のため百貨店の美容部員として就職したあたしは、女性社会の上下関係や求められるものの厳しさにすっかり参っていた。
「できないとこ全部書き出して休憩室に貼っといたから」
きつい事を言われたりひどいクレームで叱られたり翌日には、感謝状が届いたりする。何が正解で何が間違いなのか、さっぱりわからなかった。

お昼休憩や休憩時間にもっと食べなさいと勧められることが一番の苦痛だった。
「そんな細いんじゃイイ仕事もできないでしょ」「スタミナ要るんだから」「遠慮しないで」
もっと食べなさい、もっと食べなさい、もっと食べなさい………。
どうして!? あんなに努力してこれだけやせたあたしに向かって、どうしてこの人たちは食べることを強要するの!? やせていることがあたしの価値なのに。

彼女らが鬼か悪魔に見える。この世のすべてがあたしを太らそうとそそのかしてくる……!!!!!
ゆるせない。耐えられない。助けて………。


気づいた時には、周りにコンビニの菓子パンの袋が散乱していた。

「……あたしが、これを? 全部? 」

目の前の光景が信じられなかった。
あれだけ自分を律して体重を維持してきたあたしが………食べちゃった! 食べちゃった! 食べちゃった……!!!!!




月に10万近くを食費に使う生活が始まった。

嫌味を言われながら仕事はなんとかこなす。解放されたらコンビニやスーパーに駆け込んで、菓子パンを買いあさる。
アパートに駆け込んで、レジ袋からそのままパンをお腹に詰め込む。
楽しいわけじゃない。おいしいわけじゃない。味なんかわからない。食べている時だけは何も考えずにいられる……。
食べれば自己嫌悪するとわかっていても、食べているあいだというわずかな時間に救いを求めて毎日食べ続けた。
冷蔵庫にものの残っていることがストレスだった。冷蔵庫を空にするとホッとした。けれどもすぐに食べたくなってコンビニに向かう。エンドレス。
1回の食事は4人前。ファミレスに入ればひとりで2000円使った。人と食事に行くことも、会うことすらしなくなった。

なんとか吐きたかった。どんなに食べても吐いてしまえば帳消しになるはず……。
トイレで1時間ねばって吐こうとしても吐けなかった。酔えば吐けるかもしれないと、浴びるようにお酒を飲んだ。
吐けないのでお腹だけがぽっこり出る。1年で18キロやせた体重は、気づけば20キロリバウンドしていた。
休日に家にこもって昼も夜も食べ続け、便器を抱え込んで吐こうと呻いていると、そんな時に限って知り合いのデビューの話が聞こえてきたりする。



音楽もできていない、仕事も中途半端、食べるばかりで吐くこともできない、姿はどんどん醜くなる……。
何の役にも立たない、やせても夢も叶えられないあたしなんか、このまま食べ続けて病気になって運ばれてしまえば……死んでしまえばいいのに……。

キッカケ③:誰かが治してくれるわけじゃない。

摂食障害外来に通い始めた。けれども、精神科の先生たちは過食症を経験したわけじゃない。
理論でものを理解し、理論でアドバイスする。それは無理もないことだけど、ボロボロに傷ついていたあたしの心に届く言葉はほとんどなかった。
救いになるのは精神科の先生の言葉ではなく、過食症当事者のブログやコミュニティを覗く時間だった。
「あたしと同じように苦しんでる人が、こんなにたくさん……」



それがどこか心に残っていたからかもしれない。
過食症専門のカウンセラーとのご縁があった。過食症経験者だった。
彼女自身のストーリーを聴いた時、その言葉はあたしの心にすんなり入ってきた。
「誰に頼っても甘えてもイイけど、最後は自分で克服しなきゃいけないんだ」

少しずつだった。本当に少しずつ。
病院に通いながら、自分が夢中になれるものを探し、ひとつひとつ試すようになった。

摂食障害は完治の難しい精神疾患。自死に至るケースも多く、長ければ10年、20年と付き合ってゆく病気。
発症のきっかけの8割がダイエットだと聞いた時、なんともいえない気持ちになった。
数年前、やせろと言われてやせた時、あたしはうれしかった。
ダイエットも美容も、本来しあわせになるためにするもの。
それが度を越したり、また「やせなきゃいけない」という強迫観念が動機だったりすることで、完治の難しい病気のきっかけになってしまう。
そのからくりが悲しかった。

エステでもどこでも、メンタルや食事まで見てくれるところは少ない。数字の結果にコミットして結果を出すだけ。
それは業界の常識なのかもしれないけれど………。

お医者さまの言葉は耳に入らなかったあたしだけど、過食症経験者の言葉は心に届いた。
あたしが治すと決めなきゃ治らないんだと気づけたのも彼女のおかげ。
過食症経験者であるあたしがメンタルケアもできるエステをするとしたら、過食症に苦しむ女の子の減るのに貢献できるんじゃないか。




「女社会でつぶれたお前に、エステ業界なんて無理だろう」
善意からのそんな忠告もあったけれど、あたしは百貨店を辞め、エステサロン勤務を経て独立した。
過去のあたし、ほんの少し前のあたしみたいな子の力になりたくて。
自分を苦しめるダイエットや美容ではなく、しあわせになるための美容を広めたくて。

キッカケ④:経験者だからこそ届く声。

エステは未経験でも資格さえあれば開業できる。
勤務1年で独立したあたしは、まずは自宅サロンを開業し、無料施術から試行錯誤を始めた。
基本はレコーディングダイエットで、LINEサポートを組み込んで食事記録を送ってもらったりアドバイスを送ったり。
初めのうちはアルバイトをしながらだった。実家を巻き込んで母の知り合いに施術したり、ツテを頼って芸能関係の楽屋で施術したりした。

「雇われてるほうが楽だよ。お前、経営には向いてない」
ある時、初対面でそう言ってきた男性に
「過食症だったあたしだからやらなきゃいけないんです! 」とおもいをぶつけた。
結果、その人があたしに経営の何たるかを教えてくれた。2ヶ月で売上が回復、エステだけで食べてゆけるようになった。

高校時代の親友を雇うと決めた時にも、「お前はまだ人を雇う器じゃない」と反対された。
「人ひとりの人生を抱えるんだぞ。食わせられなくなったら体売る覚悟あんのか? 」
「わかった。体売る覚悟でやります」
持ち直した売上が彼女を雇った初月にはガタ落ちしたけれど、体を売る覚悟で……と背水の陣で臨んだぶん人に頭を下げることが苦にならなかった。
「今月ヤバいんです! 紹介してください!! 」
あちこちに紹介を頼み込み、彼女を育てお店を育て、気づけば彼女はあたしの右腕、頼もしい存在になってくれていた。


2016年2月1日、目黒区のサロンをお借りして、パーソナルダイエット専門店 「Romantic Diva」をオープン。


DIVA――歌姫。
歌で身を立てる道は手放したけれど、あたしのおもい、スタッフのおもい、利用してくださるお客さまのおもいが叶うよう願って。

あたしの意図の反映なのか、過食症をはじめとした摂食障害に悩む女の子の利用も多い。
エステは、どちらかというと過食症にならないように予防するためのもの。
あたしにできる事はし、話せる事は話したうえで、「何かあったら相談してね」と長い目で見て寄り添う。
過食症の子を雇ったこともあり、紆余曲折経て完治するところまで近くで、また遠くで見守らせてもらった。




摂食障害は、究極、自分自身に治す意志が生まれない限り治らない。
自分自身の可能性を諦めたり、誰かに縋って治してもらおうとしたりしているうちは、どんな名医にも治すことのできない精神疾患だ。

ただ、その克服する意志を持つきっかけとして、誰かの生きる姿や掛ける言葉の活きることはある。
そして、その多くは経験者の姿や言葉なのだ。
同じ病気を経験し、死ぬほど苦しみ、克服し、いま充実した日々を生きている姿こそが、
「誰にも理解されない」と孤独感に苦しんでいる当事者の心に訴える力を持っている。

最後は自分自身。けれども、ひとりひとりがその意志を持つまでに働き掛けられる部分はあたしにもある。
そう確信しているから、あたしはこの声を届けてゆく。


過食症は治るよ。
そして、夢は叶えられる。
その夢は、初めに心に抱いた形とは違うかもしれない。紆余曲折経て気づいたころに……かもしれないけれど。

あたしは、みんなを笑顔にしたくて歌手をめざした。ただ、それだけが動機ではなかった。劣等感や周りの期待もたくさんあった。
いまでは、劣等感からでも期待に応えようとするプレッシャーからでもなく、したい事として、女の子の笑顔を生み出すお手伝いを仕事にしている。
「いまのままじゃダメだ」なんて悲しいおもいから自分を苦しめるダイエットをするのではなく、
「もっとステキになれるかも」という軽やかで前向きなおもいから自分をしあわせにするダイエットや美容を選んでほしくて。ひとりでも多くの女の子に。




劣等感をごまかしていた学生時代。ガリガリにやせていた二十歳のころ。過食症になってリバウンドした美容部員時代。
キレイ事を言っても、あのころは返って来ないしやり直せない。だからといって、戻って来ない青春を悔やんでも何の意味もない。

だったら、活かすしかない。
そんな経験があったからこそ……と言える瞬間をひとつでもたくさん掴み、つらかったあのころの自分に笑顔を向けてやりたい。

そして、未来のある女の子たちに希望を届けたい。
女の子たちが無理なダイエットで苦しまなくて済むように。いま苦しんでいる女の子には、克服のきっかけになるように。



これが、あたしの人生のKeyPageです。

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掲載日:2017年10月06日(金)

鍵人No.0086

初芝恵梨菜(はつしば えりな)

1991年、千葉県生まれ。歌手を志した短大時代に過度のダイエットで18キロやせ、その後就職したストレスで過食症を発症、20キロリバウンドする。摂食障害発症の大きな要因であるダイエットについて正しい知識を届けるため、サロン勤務を経て自宅サロンを開業、2016年2月Romantic Divaをオープン。ラインサポート付きのオリジナルプログラムで寄り添う施術が人気を呼んでいる。

HP
http://romantic-diva.net

ブログ
https://ameblo.jp/lovelovinsonxerichel?frm_id=v.jpameblo&device_id=f95020e0c4404f7bb30c178bbe59616a

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