ずっと憧れていた夢の世界。
初出勤当日、サロンの扉を開ける瞬間。まるで自分の新しい人生の扉を開けるかのように連想され、私はワクワクを隠しきれず、これから始まる自分らしい本当の人生に一片の迷いもありませんでした。
「はじめまして!今日から働かせて頂く竹本実加と申します。どうぞ宜しくお願い致します!」
内気な自分が精一杯の笑顔で発した言葉。
「今日からが本当の人生の始まりなんだ!絶対に頑張って結果を出してみせる!」
大きくおろした頭を上げて見た先輩たちの表情は…私の期待を一瞬でかき消すほどのものでした。
「はいはい、よろしく〜。。」
まるで私のことなんて気にも止めていないような態度。
きっと忙しいんだな、となんとか良い解釈を見つけて自分をごまかしながらも、私は只々見習いとして早く役に立てるよう技術を磨いていくしかありませんでした。
しかし、そこは完全なタテ社会で、上の者が絶対であり、責任だけがどんどん下に降りてくるような、甘えの無い職場。
「あんたいつ辞めるの?役立たずなんだから早く辞めればいいのに。」
見習いの私は、いつも罵られることも少なくありませんでした。
それでも自分の叶えたい夢だったから、悔しくてもなんとか自分を信じて日々を乗り越えることしか出来ませんでした。しかしそれも長くは続かず、私の精神は気づかぬうちにボロボロになってしまっていたのです。入社してたった一ヶ月後のことでした…
そんな日々戦いの環境、みな自分の事ばかりでお客様の事を第一に考えていない。
尊敬していたスタイリストの姿はいつしか空想にすら思えてくるほどでした。私は、感動を与える美容師に憧れていた。それはただ人をキレイにしたかっただけじゃない。ずっとコンプレックスだった内気な自分を変えたくて、私は美容師を通してお客様の心も幸せにしてあげられるような人になりたかった。
「こんなことなら美容師なんて辞めてやる!!」
小さい頃からの夢を叶えたはずなのに…そこで何もかもなくなってしまい、私は何をしたらいいのか分からなくなってしまいました。
掲載日:2016年12月02日(金)
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竹本実加のエピソード一覧
ヘアメイクアーティスト
竹本実加(たけもと みか)
ヘアメイクを主として美容全般で活動する竹本実加さん。幼い頃に抱いた「美容師になりたい」という夢。内気だった彼女が独立するほどの強さをもてるようになれたのは、自分にとっての理想像を見つける為の一歩踏み出す勇気だった。