なぜホームレスになったら上手くいくのか全くわからないまま、僕は西野さんの家を後にした。とにかくまずは寝る場所を探さなければならない。
僕は目についた公園を寝床として暮らすことにした。ホームレス生活を続けていくと、自然とホームレス仲間が出来た。雨が降った時に寝るオススメの公園。
炊き出しをやってくれる場所など、ホームレスも情報社会なのだ。
そんな僕の生活は、西野さん(が面白がるため?)のアドバイスのもと毎日生配信された。ホームレスの人達は、皆色々な事情があってホームレスをやっている。
バレないように音声だけを隠し録りして配信するのが当たり前になっていた。そんなスレスレの内容が評判となり、僕の生配信の視聴者は日に日に増えていった。
そんな生活の中あることに気付いた。
「ホームレスとはいえお金がなくては流石に死んでしまう!」
僕はなんとかお金を作ろうと、西野さんに相談に行った。
「BASEやったらええやん!」
BASE…?これまた初めて聞く単語だ。
聞けばBASEとは、自分で簡単にネットショップを開設できるサービスとのこと。西野さんは「そこで小谷のショップを立ち上げたらええやん!一気に社長や!よっホームレス社長!」
西野さんがケラケラと笑いながら、ただただ僕は不安でしかたなかった。
「いや、僕売るものなんてないっすよ。」
「自分の一日売ったらええやん!ギャハハハ!」と西野さん。
ホントこの人は…汗
その時、「ただいま〜!」と誰かが帰ってきた。
「紹介するわ!我が家に来たヤン君!」
話を聞くと、このヤン君と名乗る人物は、2009年のアメリカの有料アプリランキングで1位を獲得するほどの凄腕の社長だった。
早速西野さんからヤン君に僕のネットショップの構想が伝えられた。
「人身売買の店!良いね!(笑)やるんだったらできるだけ安く!あ!一日50円で買えることにしよう!」
はい?
西野さんに続き、このヤン君もとんでもない人だと思った。1日を50円で売ってどうやって生活できるのだろうか?この人はバカなのだろうか?
そう思い2人を見てみると、「え?お前がバカなんじゃない?」と言われているほど2人はゲラゲラと笑っていた。
しかし、その後に言ったヤン君の言葉になんだか僕は感銘を受けた。
「小谷くんはできるだけ多くの人に会って、ほぼ無償でその人達を助けてあげるんだ。そこで発生する“恩”で人生を回したほうが良い。大丈夫!“恩”って言うのは必ず返ってくるから。」
お金を必要としない生き方。そんな生き方があるとは知らなかった。ホームレスとして僕は自分の一日を50円で売る。ホームレス社長の誕生だ。
こうなったらどこまででも行ってやる!草むしり、引越の手伝い、ペンキ塗り、ライブの出待ち付き添い、パシリ、鬼ごっこの相手、飲み会の人数調整、うつ病患者の話し相手、ヌードモデル…僕の一日は50円で飛ぶように売れていった。ま、月給1500円ですが。
しかしそうやって誰かのために恩を売っていくことで、ご飯をご馳走してもらったり、宿を提供してもらったり、着るものを買ってもらえたり…気付けば僕は1円もお金を使わず生活をしていた。
世の中には、借金に苦しみ自殺してしまった人もいるだろう。お金でモメて大切な人との縁が切れてしまった人もいるだろう。
「お金ってなんだ?」
そんな事を考えながら、僕はホームレスなのに笑っていた。
幸せを噛み締めながら、僕は今日も50円で買われ、誰かの為に働いている。
これが僕の、ホームレスで幸せを掴んだKeyPage…
掲載日:2018年11月28日(水)
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小谷真理(こたに まこと)
自分の一日を50円で売りながらホームレス生活をする小谷真理さん。彼の人生を激変させたのはキングコング西野さんからの上手くいくためのアドバイスだった!