この旅の途中で計画した、四国一周電車の旅。
しかし、どう見積もっても四国まで行くための交通費がなく、僕は途方にくれていた。お金がないことを理由にやりたいことを諦めることをしたくなかった僕は、ふとヒッチハイクで目的地に行くことは出来ないものかと考えた。いや、無料で行けるヒッチハイクしか手段がなかった。
「ヒッチハイクして四国まで行ってくる!」
そう言って家を飛び出たが、いざヒッチハイクを行うとなると、どうすれば良いかわからず緊張で足が震えた。
「人の目が怖くて目立ちたくない」という、克服したはずの自分が現れた。その場所をただ歩き回り、時間だけが過ぎていく。だんだんと日が暮れて、このままではマズいと思った僕は2時間後にやっとヒッチハイクを始めた。スケッチブックに書かれた目的地の文字は、僕の心情を表すかのようにか細く頼りなかった。道端に立つとみんなが見てくる。笑われ、指をさされ、とても嫌だった。でも、続けるしかなかった。
「ヒッチハイカーかな?よければ乗っていく?」
それでもなんとか頑張り続けた結果、やっと停まってくれた一台の車。
頭を下げてその車に僕は乗り込んだ。これが人生で初めて僕が経験したヒッチハイクだ。その後も何台か乗り継いで、確実に目的地に近づいていく一方で、どんどん日が落ち、人気がなくなっていく不安にかられていた。
そしてついに、トイレと自販機しかない小さなPAで僕は一人取り残された。車もほとんど通らず、声をかけても断られ続けた。「もう無理か…」諦めかけた頃、一人の男性が声をかけてくれた。その人はさっき一度話しかけて、断られた人だった。
「君大丈夫?ここからどうするつもりなの?」
事情を話すと、その方は快く車に乗せてくれて自分の目的地と逆方向にもかかわらず、人が見つかりそうな大きなPAまで50kmもの道のりを乗せてくれた。車中ではこれまでの辛かった過去のこと、なぜ旅をしているのか、その全てを赤裸々に話した。その方は静かに聞き入ってくれた。目的地につくと、「何も食べていないでしょ?温かいものでも食べて。」と、うどんをご馳走してくれた。今まで食べた中で一番美味しいうどんだった。受け取ってばかりの僕に、お兄さんは言った。
「君に出会えて良かったよ。」
優しく投げかけられる言葉を聞いて、僕はそこで出会う人の優しさに触れヒッチハイクというものに感動を覚えた。
掲載日:2017年02月17日(金)
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川角健太(かわすみ けんた)
株式会社オンリーストーリーの取締役を務める川角健太さん。ヒッチハイク日本一周で繋げられた人の縁。そこで気付いた人と人を繋ぐ「御縁の恩贈り」とは。